<< 「もどってきたアミ」第2章 岩の上にある(?)ハートのマーク
第3章 念願の再会
僕は、思わず彼に抱きついた。涙がとめどもなく流れ出た。やっぱり、本当のことだったんだ。全てみな、本当のことだったんだ。
「ペドゥリート、大きくなったね」
「本当だ。アミは前より小さくなったね。ちぢんだんじゃない?」
以前と全く同じように、ふたりで笑い合った。
突然、僕はテントの中で僕を待っているビクトルのことを思い出した。
「前のときは、おばあちゃんで、今度はいとこか。きみは、本当にとりこし苦労せずには生きていけないみたいだね」
アミは、以前と同じように僕の考えていることをキャッチして言った。
「そうだね。でも・・・」
「でもも何もないよ。彼は今、ぐっすり眠りこんでいる。今夜(という時間)は全て僕たちのものだ」
「本当?」
「本当さ。じゃ、また見てみようか?」
と、あのいつもの小さなテレビのような器械を腰のベルトから取り出して言った。
「ううん、その必要はないよ。きみを信じているから」
「へえ!!それはもう一歩前進したということだよ」
「えっ?」
「なにかを信じられるようになったわけだ」
「なにが言いたいの?」
「ペドゥリート、きみが今日ここに来たのは、きみの疑惑をはっきりさせるためじゃなかったのかい?」
そう言われて僕は少し考えた。たしかにアミの言うとおりだ。僕はアミの存在を疑った。それをはっきりさせるために、ここに来たんだった・・・。
「ほんと、来てよかったよ。これでアミが本当にいるということが、はっきりしたんだからね」
「でも、僕が帰ってしまったら、また疑いはじめるんじゃないの?全てが夢だったんじゃないかって・・・」
「ううん、もう絶対、疑わないよ。きみは本当に現実にいるんだからね」
と言って僕はアミの肩にさわった。
「でも以前だって今と同じように現実だったんだよ。それなのにきみは疑った・・・」
「たしかにきみの言うとおりだよ、アミ。でもどうして人は、こう、疑ったりするんだろう」
「それはね、ペドゥリート。頭脳には、いろいろ異なったレベルがあって、ときにより、あるレベルから別のレベルへと接続が変わるんだよ。
同じ人があるときにはとても乱暴で残酷になるし、また別のときには温厚でとても優しい人にもなる。もし、その人が高いレベルにいれば、素晴らしい体験ができるようになる。
例えば、僕と出会えたり、大きな真実を理解できたり、自分の夢を実現させたり・・・。でも、もし低いレベルにいるとすれば、こういった高いレベルとはつながらない。
たとえ、以前はそれを知っていたとしてもね。疑い出すから・・・」
「もう絶対、疑ったりしないよ、アミ。でも、どうして去年の夏、僕に会いにきてくれなかったの?僕はちゃんと本を書いたのに・・・」
アミは笑って、
「僕が直ぐに、またくるとでも思っていたのかい?はっきりいつとは言わなかったろう?きみは、内面の平静をたもつ能力を育てていかなければならないんだ。
短気は、宇宙とは調和しない。全てのことには、それぞれ時機というものがある。さらにきみの疑いの気持ちは、コンタクトに必要な条件を満たしていない。
だけど、きみはちょっと例外だ。たとえときどき、僕の存在を疑ったりするとしてもね」
「本当にごめんね、アミ。もう決して、今度のようなことを繰り返さないと誓うよ」
アミは入江の反対側にある温泉場の光を見ながら、夜の潮風を深く吸いこんだ。
「ともあれ、宇宙は全て完璧だ。行こう。銀河系の散歩につれていって上げるよ」
「ヤッホー!でもアミ、円盤はどこにあるの?水の中?」
「いや、そこだよ、そこ。上」
と言って空のほうを指さした。僕は彼の示したほうを見上げた。
でも、そこには天空にちりばめられた数多くの輝く星が見えるだけだった。
「どこにあるの?僕には見えないよ・・・」
「視覚不可能な状態にあるんだよ。行こう。きみに紹介したい人がいるんだ」
「ひとりで来たんじゃないの?」
「いや」
と言うと、彼は腰のベルトから小さな器械を取り出した。
知らない人と一緒に円盤に乗るなんて、最初は全然気乗りがしなかった。僕はまたアミとふたりきりで宇宙へ行きたかったんだ。
「どうやって円盤に乗るの?」
その瞬間、黄色い強い光が僕たちを照らし出した。同時に、自分の身体が空中に浮きあがっているのに気が着いた。でも、これは以前に体験していたことなので、それほどおどろかなかった。
僕たちの頭上に、ポッカリとおなかに穴のあいた円盤が見えたと思うと、直ぐに僕たちは円盤の中の僕の知っているあの小部屋に立っていた。感激で胸がいっぱいになった。
「どうしたの?ペドゥリート」
アミが笑って聞いた。
「きみは泣き虫だなあ」
「だって、また円盤に戻ってこられて(クスン)、なんだか信じられないよ。でも、これは夢じゃなくて現実なんだ・・・(クスン)。アミ、ありがとう」
「なに、ひとりで感激しているの?もし、きみが疑ったりしなければ、こんなことはきみにとって、いつだって当たり前のことなんだよ。さあ、行こう。操縦室できみに会わせたい人が待っているんだ。こっちだよ。おいで」
僕はなんの期待もなくアミのあとについていった。オフィルで奇妙な容姿をしたいろんな人たちを見ていたので、どうせ、また、緑色の顔をした人でも待っているんだろうと思ったからだ。
操縦室に入ると、ほぼ人間の容姿をした、風変わりな女の子がいた。色白で痩せていて、耳の先はピンととがり、紫色の瞳をしていた。
長いバラ色の髪の毛に布製のちんけな蝶のリボンをつけ、ゆったりとした青いつなぎを着ていた。
まるで異様なものを見るように僕をじっと見ていた。かなり無愛想だし、はっきり言って少しもかわいいとは思えなかった。
アミは彼女と、僕には全く理解できない言葉で話しはじめた。会話の中で僕の名前を言ったことだけはわかった。
「ビンカを紹介するよ」
アミは、僕に言った。
「さあ、あいさつして」
アミは、僕と彼女に、それぞれの言葉で言った。
お互いに、知り合えてうれしいという気持ちもほとんどわかず、ただ無愛想に相手を見た。彼女は痩せた長い腕を僕のほうにさし出してきた。彼女の手にふれるのは、正直言ってちょっと抵抗があった。
でも、そこは礼儀正しく、そして、そっと彼女の指にふれ(五本あった)、握手をした。暖かくて柔らかな感触が、僕の手に伝わってきた・・・。
よろしくと言うと、みながやるように、ほおにキッスしようと彼女に近づいた。とたんに、彼女はおどろいて、なにかわけのわからない言葉をつぶやくと、さっとほおをしりぞけた。
アミは大笑いをした。そして、彼女の言葉で、(これはあとになってわかったんだけど)僕の星ではごく普通におこなわれているあいさつの仕方なんだと教えた。
「彼女の星ではそんなふうにはしない・・・。習慣の違いだよ」
アミは笑いながら僕に言った。
オフィルでは、キッスを交わすのはごく普通のことだった。
「ということは、彼女の星は文明世界じゃないんだ?」
「そのとおりだよ。ほぼ地球と同じくらい遅れた世界だ。少し、ふたりで話したらいい。これを耳につけてね、翻訳器だ」
と言ってアミは、コードレスの補聴器のようなものを僕たちにひとつずつ手渡した。
「さあ、話してごらん、ふたりでいろいろと」
それぞれ別の言葉で話しているが、翻訳器を通してその訳が聞こえてくる。
「ど・・・う・・・も」
と痩せた奇妙な女の子が言った。
彼女のくちびるからは、聞きなれない変な音が発せられているけど、器械を通すと意味がちゃんとわかった。
「やあ」
と答えた。
「あなたの惑星はなんていう名前?」
彼女が聞いてきた。
「地球っていうんだ。きみのは?」
「キア」
彼女は答えた。
こうして彼女と話をして、意思が通じ合うようになってみると、最初、奇妙に思えた彼女の容姿に対してあまり違和感を感じなくなってきた。
「ビンカ、年はいくつ?」
「245歳」
とこともなげに答えた。
僕は腰を抜かすくらい驚いた。どう見ても、そんなに恐ろしく年をとっているようには見えなかった・・・。
「ちょっと待った、待った」
アミは、ニコニコしながら僕たちの会話の中に入ってきた。
「地球が太陽をひとまわりするあいだに、キアはキアの太陽を20回、まわるんだ。だから、ふたりはほとんど同じくらいの年だよ」
僕は納得して、ビンカをじっと見た。ピンと先のとがった、かたちのいい耳が、生まれたばかりのヒヨコのような柔らかい髪の毛とよく調和していた。
「じゃきみの惑星じゃ顔にキッスはしないんだ・・・」
「恋人とか夫婦のあいだでしかしないの。あなたたち地球人ってとても進んでいるのね」
「オフィルほどじゃないよ」
「えっ、なに、そのオフィルって?」
「文明世界だよ。ちょっとアミ!ビンカを進んだ惑星にはつれていってあげていないの?」
「もちろんつれていってあげたよ。でも、オフィルとは違う惑星へね。いいかい、これから、とてもおもしろいものを見せて上げるよ。銀河系のダンスだ」
僕は、もっとわかりやすく説明してくれるように頼んだ。
「きみたちは、星が動くということを知っているよね・・・」
ビンカに僕の天体の知識を披露したくなった。
「惑星は動くんだよ。でも恒星は動かないんだ」
アミは少し笑ってから、
「そう、たしかに動かないようだけど、じつは超スピードで銀河系のまわりを回転しているんだ。それをこれから見てみよう。
時間・空間の外の次元にでもいるような感じで、銀河系、天の川を見てみるのさ。ちょうど映画のフィルムを高速回転(早送り)したような感じでね。わかる?」
ふたりとも首を縦に振ったものの、なんだかキツネにつままれたような感じだった。
「それぞれの星が動くときに閃光を放つんだけれども、そのときの音も聞いてみよう。それと同時に銀河系を形づくる天体の一つひとつが、どういう音を発するのかも観察してみよう。じゃ、こっちへきて」
アミは、僕たちにイスに座るように言うと、コントロールボタンを操作した。中央のスクリーンに、見なれた温泉場の風景がうつった。そこにはビクトルの車とテントがあり、岩の上には翼のはえたハートのマークがはっきりと見えた。
「あっ!やっぱりちゃんとあそこにマークがある!僕がいくらさがしても見つからなかったのに・・・」
「ペドゥリート、じつは、ちょっときみをからかってみたんだよ。ハートはいつもあそこにちゃんとあるんだけど、きみをちょっと催眠状態にして、見えないようにしたんだよ」
「でも、どうやって?僕はきみの催眠の指令の声をなにも聞いていないよ」
「テレパシーでやったんだよ」
「遠隔催眠よ!」
とビンカが感嘆してさけんだ。
「そりゃ、きっとすごいことだ」
と僕は言った。
もし、そんなことが僕にできるなら・・・といろいろな可能性を想像してみた。
例えば、おもちゃ屋のおじさんに、僕の好きなおもちゃを全部プレゼントさせるようにするとか、試験で全く白紙の答案用紙を出して先生に満点をもらうとか、それから・・・。
「もし、誰にでもこの能力を与えたとしたら、どんなインチキをやらかすかわからない。だから悪用する人の手の届かないところにあるんだ。宇宙の基本法が、この能力を統制しているんだよ」
僕にはこの能力をそなえる資格があると思った。
「僕、その宇宙の基本法がなんなのかを知っているよ。愛なんだ・・・」
「知っているだけで十分だと思う?」
「なにが不足しているの?」
「それを実践することだよ」
「ああ、そのとおりだね。だから、僕はいつもそれを実践しているんだ」
とそのとき、僕は心の底からそう思って言った。
「自分の気まぐれを満足させるために、おもちゃ屋さんを破産させることが愛なの?ペドゥリート。人の意思に反したことを強制することや、人を騙したり、ペテンにかけたりすることが愛なの?」
僕の頭の中で、自分でも気がつかないほど素早くかけめぐった一瞬の想像を、アミはキャッチしていた。
有頂天になっていた僕には、アミの言葉が、バケツで冷水を頭から浴びせられたように痛かった。
彼のきつい言葉の前に、僕は立っていることもできず、イスにガックリと座りこんだ。まるで身体を真っ二つに割られてしまったような感じがした。全身から力が抜け、その上、ビンカに僕のはしたない考えを知られ、叱責されたところを見られてしまった・・・。
アミは優しい声で僕を元気づけるように言った。
「心配しないでいいよ。彼女は今、軽い催眠状態にある。だから今のことはなにも聞こえていないよ」
そう言われて僕は少し安心した。しかし、まだ動くことも話すこともできなかった。僕は、いつも自分自身を模範生のように考えていた。
でもちょくちょくやましいたくらみを想像しているのを、はっきりとアミに指摘されてしまった。
どうしてかわからないけれど、少しずつアミに対して怒りのような気持ちを感じはじめていた。その怒りは、先ほどの言葉ですっかりうちのめされていた僕を元気づけるものだった。
「これは、僕の仕事のもっともつらい側面なんだ。誰だって自分でも気がつかなかった欠点を人に指摘されるのは、いい気持ちがしない。
でも、誰かがそれをしなかったら、本人は決してそれに気がつかないし、まして克服することなどできやしない。
でも、それを指摘するにはちゃんとした言い方をわきまえていないといけないし、少しずつやっていかないとね・・・」
アミの一つひとつの言葉が、僕に対する非難であり攻撃であるかのように感じ、僕の怒りはますます大きくなっていった。
いったい、彼は何様だって言うんだ。たかが僕のちょっとした冗談半分の空想を、こうも真正面からとらえて、残酷に批判したりして・・・。
もしその遠隔催眠を使えたとしても、決して悪用なんかしない・・・。そうだ、僕は今までいちども悪い子でいたことなんかない。
悪い子どころか、むしろ正反対じゃないか・・・!
そう考えているうちに元気を取り戻してきた。
「エゴが元気づいてきた?」
アミがいつものように笑って聞いた。
その笑いは、僕には残酷で冷ややかなせせら笑いのように感じられた。
「まだそうやって僕を攻撃し続けるつもり?」
僕の声は挑戦的だった。もう帰りたくなった。ビクトルのいるテントに。もうこれ以上、こんなことにかかわるのはうんざりだった。
僕は立ちあがった。もうへこたれちゃいなかった。また、自分自身をとってもいい子だと思いはじめていた。ただアミが、これといった理由もなく僕のことを悪く言っているんだ…。
僕は彼を冷た眼差しで見て言った。
「やい、いい子ぶった宇宙人。愛を語り、大げさに愛を吹聴するけど、実際にやることといったら、人の小さな欠点をあげつらって非難することだけじゃないか。きみに愛なんかちっともありはしない。
ガティカ神父と同じだ。説教はするけど自分では何も実行しない。きみのような恥知らずな人に何もいいことなんかできるはずがない。だから僕、もう帰るよ。帰るったら!」
アミは、僕の興奮したののしりの言葉をとても冷静に聞いていたが、その視線にはなんだか悲しげな影が感じられた。
「ペドゥリート、心が痛むのはよくわかるよ。でも、これも全てきみのことを思ってのことなんだよ。ごめんね」
「なにも謝ることなんかないさ。僕はもう帰る」
ビンカが目をさました。
「ペドゥリート、帰るって、もう帰るの?もっといろいろ話がしたかったのに。あなたのことや、地球のことについて・・・」
彼女の言葉は僕をおどろかせ、同時に僕の心をやわらげて、現実に引き戻した。
僕は深いため息を着いた。
「うん、僕だって・・・行きたくなんかない、ビンカ・・・、でも・・・」
「でも、なあに?ペドゥリート」
紫色の瞳で僕をじっと見つめてビンカが言った。
僕はそのとき、はじめて彼女をとても美しいと感じた。
「どうして行かなくちゃならないの?」
「行くって?僕が?いったいどこへ?」
「行くって言ったじゃない。どうして?」
その”理由”を思い出した。
「だってアミが変なことを言ったんだ。僕のこと、侮辱したんだよ」
「私、眠っていたのかしら、何も聞かなかったわ。アミ、本当にペドゥリートを侮辱したりしたの?」
「本当のことを言うことが侮辱したことになるの?ただ、間違っていることを指摘してあげたかっただけなんだよ。それが彼のエゴを傷つけてしまったんだ。でもそのうちおさまるだろうよ」
僕はビンカの優しい視線を感じた。
「行かないで、ペドゥリート。話したいことが沢山あるし・・・」
僕も全く同感だった。彼女の全てが知りたかった。
アミは、また冗談を言った。
「禁じられたロマンスはそのくらいにして、これから銀河系のダンスを見てみよう。きみたちには、それぞれパートナーがいる。
前回、未来をのぞき見たときに、それぞれに自分の”双子の魂”を見せてあげた。まだ実際に出会っていないとはいえ、そのことに忠実であるべきなんだ」
自分でも変だけど、彼女にもう定められた相手がいるのかと思うと、なんだか嫉妬のようなものを感じた・・・。
「アミ、考えすぎないでね。私、ペドゥリートとはお友だちになりたいだけのことだから」
「知り合ってもいない人に、誠実でいなきゃいけないっていうのは難しいね」
と僕は言った。
「いや、もう知っているんだよ。たとえ未来でのほんの一瞬の出会いだとしてもね。それにきみたちが知っている五感以外にあるもうひとつの別の感覚、沢山のことを可能にするその感覚を通して、ずっと未来に出会う人をキャッチし感じ取ることができるんだよ」
「テレパシーのこと?」
「テレパシーは思考と関係している。今言っている感覚はもっと感情に関係していることなんだ。ペドゥリート、きみは自分のパートナーの存在を感じたことはない?」
これはあまりにもプライベートな質問だった。
「えーと、うーん、ときどき・・・夜、ひとりのとき、どこかで誰かが僕を待っているような気がする・・・」
「考えるの?それとも感じるの?」
「うーん・・・たぶん、感じるんだと思う、そのときは」
「そのとき、その瞬間、その人を愛することができる?」
「エーと・・・わかんない。たぶん・・・たぶんできると思う」
「じゃ、その高度な感覚が発達しているんだ。人間として進歩するには、この感覚を発達させなくてはならない。この感覚のおかげで、我々は思考やその他の感覚を必要とせずに精神的なものをキャッチすることが可能になるんだ。
そうやって、よい人かあまりよくない人か、嘘か真実かを見分けたり、本当の愛や、神の存在を感じ取ったりすることができるようになるんだよ」
「私の惑星、キアでは、神を信じていない人が大勢いるわ」
とビンカが言った。
「この感覚があまり発達していない段階では、信仰というものは必要だ。でも、そのあとはもう信じる信じないの問題じゃないんだ。ただただ神の、その素晴らしい存在を感知するだけで十分なんだ。
こうやって、神の姿を全く見る必要もなく、我々は神に愛をささげることができるようになるんだ。また、この高度な感覚によって、我々の未来のパートナー、双子の魂を感じ取ることも、それに忠実になることもできるんだよ。たとえまだ実際には、目の前にいないにしてもね」
僕は未来の”日本の女の子”のことを考えた。でも、なにも感じなかった。アミの言った感覚が、僕には発達していないのか、それともビンカの突然の出現が、なにか僕に電波妨害のような状態を起こさせているのか・・・。
「さあ、これからとても素晴らしいものを見せて上げるよ。でもその前に、円盤の内部にある”けがれ”を取りのぞかなければならない。そうしないと悪い脳波による電波混信を起こしかねないからね・・・」
アミは僕の”日本の女の子”に対するうしろめたい思いを見ぬいている!
罪悪感をおぼえた。
「ペドゥリート、今、それはちょっとおいておく必要があるよ」
「そうだね、アミ。もうそのことを考えるのはよすよ」
「僕の言いたいのは、僕に恨みを持たないようにということだよ・・・」
なんだ、そのことだったのか!僕はまた、てっきりビンカの出現によって感じはじめた彼女への強い思いのことかと思っていた。でも、幸いにもアミはそれに気がついていなかった・・・。
「じゃ、また友だち?」
アミは、ほほえんで僕に手をさし出してきた。彼と友だちでいられない理由はなにひとつなかった。
「うん、友だちだ」
また今までのように仲よく握手した。
「ブラボー!」
耳の先がとがった女の子は喜んで言った。
「ブラボー!じゃ、これから銀河系のコンサートを見ようよ」
「ダンスだよ。でもコンサートでもあるね。じゃ座って、ペドゥリート」
とアミが言った。