アミ 小さな宇宙人

「アミ 3度めの約束」第3章 新しい人生

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第3章 新しい人生

「これでクラトの人生はすっかり変わったわね、どうするの?これから・・・都会に戻るの?」
とビンカが聞いた。

老人は少し考えこんでから、
「ウーム、都会か、・・・現代で最初に変化したテリ・・・わしは名声なんか、まっぴらだからな・・・それに比べて、ここは静かだし、何カ月も誰にも会わずに暮らしていけるし、ここにいたほうがずっと幸せだよ」

と言った。僕達は本当は彼がひとりぼっちに退屈したり、落ちこんだりしていたことを知っていたけれど、なにも言わなかった。

「テリの巡視隊も見かけないの?」

「スンボとワコの戦争が終わってからは、誰ひとりとしてこのへんをとおる者はいないよ」

「それで退屈しないの?クラト」

「ウム・・・正直いって、ときどきひとりぼっちを寂しく感じるときがある・・・。ところでアミ、”ベドゥリート”の惑星に行く切符は持ってないのかい?ひょっとすると、あっちには、いいばあさんがいるような気がするんだがね・・・」

「でも、名声を得るのがイヤだというのなら、地球へ行ってもそううまくいかないよ・・・地球に降り立った宇宙人、なんてね、どう思われると思う?」
と僕は言った。

「でも、どうしてわしがよその惑星の人間だってわかるんだい?黙ってりゃ、わかりっこないさ、それで問題解決だよ」

「クラト、その耳やその紫色の瞳や、白髪のまじったピンク色のかみの毛を、いったいどう思ってるの。誰でもクラトを見たら、ふるえあがって逃げ出すよ、地球人以外のあらゆる奇妙なのを想像して・・・」
と僕は笑って言った。

「見かけを少し変えないかぎりはね・・・」
とアミは気をもたせるような言い方をした。六つの目は小さな宇宙人を穴のあくほど見つめた。

「ちょっと、君たち!そんなふうに僕を見ないでよ。誰も殺したわけじゃあないんだから!・・・僕が言いたいのは、我々の技術でどんな生物でも外見をある程度は変えることが許されているということなんだ。でも、どんなことでも許されているということじゃない・・・」

「じゃ、脚を少し太くすることは?」(ビンカ)
「じゃ、背を少し高くすることは?」(僕)
「しわをのばすことは?」(クラト)

僕達は、一人ひとりが望んでいることを、アミがかなえてくれるかもしれないと知って、興奮して言った。アミはいつものように大笑いをして言った。

「バカなことは言わないでね、これはとてもデリケートな問題であって、個人のおしゃれ心を満足させるためのサービスじゃないんだ」

「じゃ、なんのための?」
と僕は聞いた。

「ウーン・・・、この件に関してはまだ言わないほうがよかったようだ・・・ときには必要な場合があるんだよ。たとえば誰かが文明世界に生まれ、未開世界の惑星の進化を手伝うようなことになった場合とか・・・」

そこまで聞いて、ビンカはいきおいこんだ。
「つまり、私は文明世界には生まれなかったけれど、アミは私の外見を変えて、地球に住めるように出来るんだわ。私の耳を丸くしたりとかして・・・」

「とんでもないことだ。今のままが大好きだよ」
と僕はびっくりして言った。

「わしのしわを伸ばして、”ベドゥリート”のようなスベスベした肌に出来るんだ・・・素晴らしいことだ!さっそく、アミの空飛ぶおんぼろマシーンへ行って整械手術をしてもらおう・・・。でも痛くはないんだろうね?」

「今言ったように、この技術はおしゃれのためのものじゃなくて、本当に重要なときのためだけにあるんだ」

「人が若く見えるようになることが、重要なことでないとでも言うのかい、アミ?」

「いや、クラト。重要なのは、一人ひとりが内面にある本当の自分の姿を、外に向けて表現することなんじゃないかな?それさえ本物だったら、たとえ、しわでさえも美しいはずだよ」

「それは、わかっているよ。わしはしわのおかげで、こんなにいい男なんだし、わしの女性ファンたちがほっておかないんだ・・・だから今度は、それほど魅力的でなくていいから、しわのない顔にしてほしいもんだよ。ホッホッホッ!」

「くりかえすけど、我々の科学は美容整形とは違うんだよ」

「でも、君たちはわしの羊皮紙が、沢山の人のためになったと言ったじゃないか・・・400年くらいは若返らせてもらっても・・・どうかね?」

地球が地球の太陽をひとまわりするあいだに、キアはキアの太陽を20回まわる。だからキア人は、地球人よりも20倍はやく年を取るんだった・・・。計算するとクラトはたぶん、1400歳くらいだろう。つまり、地球の年で数えれば、70歳くらいになる・・・でもあとになって、もう少し若いことがわかった。

アミは腕を組んだまま、身動きもせずにじっと別のほうを見ていた。

「じゃ、300年だ。ペストソを吸うのももうやめたし、最近ずっと悪い言葉も使っていない。×××××なんて言ったこともない、あっ、失礼!ホッホッホッ!ウム、じゃ、250年?」

「愛から生まれたものは、取引の対象にはならない」
とアミは僕達を見ずに言った。

「200年?わしはあの羊皮紙を書いたじゃないか」
とクラトはおろかにも言いはった。他人ごととはいえ僕は、はたで見ていてはずかしくなった。

「大きな魂にとっては、大きな奉仕ができたことそれ自体が報酬なんだよ。奉仕とは援助ではなく、特権なんだよ」

「じゃ、二日?今日は耳も洗ったし、お祈りもした・・・」
とてもふざけた調子でクラトは言った。

そのとき僕達はやっと、彼が冗談で言っていたんだということに気がついて、大笑いしてしまった。

ビンカはそのあと、なおも言いつのった。
「じゃ、今度はまじめな話だけれど、アミ。私が地球に住めるように、私の外見を少し変えること出来るの?どうなの?」

「わかった、わかったよ。出来るよ、でも、あまり期待はしないほうがいい。ゴロおじさんのことを忘れないでね・・・」

「その話をわしにしてくれんかね?」
とクラトが言った。

ビンカは僕達の問題を話しはじめた。クラトは事情をすっかり理解すると、がぜんはりきりだした。

「わしがビンカのおじさんを説得しにいくよ。で、もし、わしの言うことを聞かなかったら、わしのこのゲンコツで・・・」
と言って、にぎりこぶしをつくってもう一方の手の平を叩いた。

それには誰もおどろかなかった。

「私のおじさんはテリで、身体がかなり大きいの・・・」

「テリ?うむ・・・じゃ、みんなでよい方法を考えて説得しよう。いつも平和で思いやりのある方法を選ばなくっちゃね、子供たち。ホッホッホッ!」

僕はそのときハッとした、とてもよい考えが思い浮かんだからだ。

「アミ、ゴロおじさんがテリからスワマに変わる可能性ある?」

「そうなったら素晴らしいよ、本当に。でも、僕の調査した結果では、彼の現在の水準だとそこまでいくのは、まだまだ難しいとでている。だから、その可能性は期待しないほうがいいよ、ペドゥリート」

それを聞いたクラトは得意になって、
「この精神的な高さまで到達出来るのは、どんなテリでもというわけじゃないからね、ホッホッホッ!」

「アミ、私のおじさんを説得するなにかいい考えはないの?催眠術かけちゃダメなの?」
とビンカが聞いた。

「とんでもない。それは宇宙の法に反することになる。催眠術をかけて人を操るなんてね。どんな理由があろうと、個人の選んだ自由は侵害してはいけないんだよ」

「でも、アミは最初の旅のとき、警官に催眠術をかけたじゃない・・・」

アミは僕の混乱している様子を見て笑って言った。
「あれは遊びだよ、ペドゥリート。少しも彼らを傷つけてない。全てをそう極端にとらえるべきじゃないよ」

「でも、そのあとには僕に催眠術をかけて、岩の上に刻んである翼のはえたハートのマークが見えないようにしたよ・・・」

「うん、あとで驚かせてあげようと思ってね。うれしい驚きだったはずだよ・・・」
と楽しそうに笑った。

「うん、そのとおりだよ。でもそのあとには、テリに催眠術をかけて僕達が見えないようにしたよ・・・」

「うん。君たちを守ってあげるためにね。それはちっとも悪いことじゃない。実際には本人はそうしたくないのに、催眠術をかけたり、暗示にかけたりしてこちらの思うように動かすのがいけないんだよ。

たとえば、宣伝とかコマーシャルの場合だよ。大勢の人を洗脳して、売りたいものを売ったりね・・・一部の広告業者が、宇宙の法から見てどんなにひどい不正を犯しているか、彼らはそれに全く気づいていない。・・・そして必ず言うんだ。”ど、どうして神は私をこんなに罰するの?”  “私は、なにも悪いことしてないのに”・・・」

「何が言いたいんだい?アミ」
とクラト。

「宇宙の基本法は愛だ。それを破ったときは、とても苦しむのさ、だって、自分のしたことは全部自分に返ってくるからね。

もし、その広告業者が、自分たちの知識と才能を人類の幸せにつながることや、意識の進歩を助けるようなことに使えば、それと引換に、素晴らしいものが受け取れるんだよ。だから、これを”ブーメランの法則”ともいうんだ」

「ブーメランの法則?」
と三人とも聞きかえした。

「原因と結果の法則、つまり作用・反作用の法則だよ。もし、君がとてもよいことをすれば、素晴らしいものが君に返ってくる。もし、人々に害をおよぼすようなことをすれば、君がしたのと同じ”色”の害が君に返ってくるよ。この法は宇宙の存在全てに対して作用しているんだ」

クラトは感動して、
「ということは、わしの羊皮紙の件は冗談じゃなかったんだ。つまり、そのお返しになにかよいことがあるってことだ・・・」

「そのとおり、法は必ず実現する。でもうぬぼれないように」

「でも、最近、ちっともいいことが起こらない」

「なんて感謝知らずの老人なんだ。今まさに、長い苦しみから解放されたばかりだっていうのに・・・」

アミはちょっととがめるような目で、クラトを見やった。

「うっ!ああ・・・それはそうだ。そのとおりだ・・・」

「もし、僕がこなかったら、クラトはずっとあのままビクビク暮らしていかなきゃいけなかったんだよ。隠れてる意味なんて、もうどこにもないのに。でも、”なにか”が僕を君に会いに行かせるようにさせたんだ」

「たぶん、正しいと思うよ、アミ。でも・・・」

「でも、なに?クラト」

「もう、わかっていると思うけど、わしはさびしいよ・・・ひとりぼっちだ・・・」

「もう都会に戻ることも出来るよ」

「わしのような年寄りがかい?都会に行ったところで、いったい、どうやって生きていったらいいものかもわからない。それに都会にはひとりも知り合いがいない。世の中のことは全くわからないし、ただ邪魔ものになるだけだ。

おまけに、これはわしにとっていちばん重要なことだけど、わしの愛しているのは、アミとこの子たちだけだ。愛しすぎているほどだよ・・・だから、一緒に住むという話をつくりあげたんだ。わしにはもう、これ以上の別れには耐えられそうもない」

ビンカと僕は感動して、愛する老人に抱きついた。

「また、メロドラマが誕生した・・・」
とアミは微笑みながら言った。

「もうこのへんで、僕達三人一緒に住むことはできないの?」

と僕がたずねると、アミは思いがけずとてもまじめな顔で、僕を見て言った。
「ペドゥリート、本当にそう望んでいるの?」

「アミ、わかるだろ。もしまたビンカを置いて地球に戻ったりなんかして、その上この山奥にたったひとりで暮らしているクラトを思ったりした日には、僕の心はまっぷたつに裂けちゃいそうだよ。

もう、そんなこと、僕、耐えられないよ・・・そうだよそうだよ、これが僕の本当の願いだよ、アミ」

「だったら、それを求めたらいい、いや、それよりも、それが本当に実現するように決めたらいい、自分自身で。

そして、それが現実となるように強く信じることだよ。絶対に手に入るって思えたら、それは手に入る。でも、疑いの気持ちや誘惑のとりこになったらダメだよ・・・。

それからもうひと言。よい願い、素晴らしい願いは君の内側のいちばん高い部分から、つまり君の中に住んでいる神の部分から生まれているんだ。

もし神がその望みを君に託したんだとすれば、それは君に実現する力があるということなんだよ。でも、それを実現するには、君の強い信念と自信がどうしても必要なんだ、わかる?」

「うん、じゃ、僕達三人は、地球へ行って、ずーっと一緒に暮らせるって、僕は信じる!」
僕は声をふるわせて叫んだ。

「私もよ!」
「わしもだ!」
ビンカもクラトも幸せそうに声をそろえた。

「そうだ。そうこなくっちゃ。それじゃ、みんなでこれからゴロを説得にいこう」
とアミは明るく言った。

「わしも一緒に行っていいかな?アミ」
とクラトが訪ねた。

「いいよね、アミ。僕達と一緒に来ても!」
とビンカと僕は叫んだ。

「うん、ちっとも問題ない。一緒に来てもいいよ、クラト」

「ヤッホー!ばんざい!ホッホッホッ!」
クラトは大喜びだった。

「なにかいい計画でもあるの?アミ」

「何もない。でも、僕達の願いは必ず実現するよ。そうだろう?」

「勿論!!!」
僕達三人は声をそろえうなずいた。

アミはビンカの都市へ行こうと言った。ビンカが住んでいるのは、クラトの小屋があるところから遠くはなれた、キアの別の大陸なんだけど、アミの円盤のスピードを考えればなんてことのない距離だ。

クラトは生まれてはじめて”UFO”に乗ったので、感動のしっぱなしだった。円盤の窓ガラスに鼻をくっつけて、どんなに小さなことでも見落とすまいとしていた。

「ホッホッホッ!・・・これはすごい!・・・でも安全なんだろうな・・・わしはかなり体重があるし、この乗りものは”トパ”のからみたいだし・・・」

トパとは、だいたいクルミのようなものだということがわかった。

「クラト、そのとおりだよ。この円盤は超軽量の物質を使っているからとても軽いんだ。でも、心配ご無用、どんなに重いものを乗せたって、持ち上げることが出来る。

なぜなら、この中では外部の重力が消えるんだよ。ここでこうして立っていられるのは、この中で人工的な重力がつくりだされているからなんだ。ここでそれを調節するんだよ。見てごらん」

アミがなにか操作すると、僕達は突然、空中に浮きはじめた。自分たちの体重を感じられない。ただひとりアミだけが、イスをしっかりつかんでいて、同じ場所にいた。

「これは空中を泳ぐようなものだ、ホッホッホッ!」

クラトは壁をけって、空中に浮いたまま操縦室の中を横切った。僕達もまねてみた。

ビンカはつま先だってクルリとまわった。いつかテレビで見たことのある、シンクロナイズドスイミングみたいな動きだ。ビンカはそれからしばらくのあいだ、空中に浮いたまま、優雅な動きを続けていた。なんてきれいなんだろう!アミが笑いながらボタンを押すと、僕達はゆっくりと床に落ちた。

「オットットットット・・・ウッ!どうやら、首の骨を折ったようだ!入院費と慰謝料を払ってもらわないと、アミ。ブーメランで罰せられるよ、ホッホッホッ!」

「僕は重力を急にもとに戻すほど不注意じゃないよ。ところで、君たち、不注意ということも、ひとつの悪のかたちだっていうこと知っている?」
とアミが言った。僕にはよく意味がわからなかった。

「たとえば、乗客が一杯乗った旅客機のパイロットが不注意なミスをするとか・・・それから、そうだなあ・・・機械が故障したとか・・・」

直ぐに理解できた。

「不注意は、わざとやったのと同じくらい、沢山の害を生みだすこともある。だからいつも、全てのことをあるべき状態にきちっと整理しておくように。注意力散漫な人にならないようにね。

忘れっぽいんだったら、きちんとメモをとって確認するくせをつけるように。道路を渡るときも十分注意するように。いつだって注意をおこたっちゃダメだよ。だって、宇宙は不注意な人達を助けることはできないんだからね」

「アミ。それ、どういうこと?」

「もし、泥棒の沢山いる地区で、鍵をかけるのを忘れたら・・・」

「ああ、なるほどね・・・」

「不注意は、大きな事業を失敗させることにもつながる」

「じゃ、円盤の操縦には、十分注意してくれよ、アミ」

「取りこし苦労は無用だよ、クラト。これはコンピューターに直結してあってひとりで動いてくれる。ぶつかったり、落ちたりしないように、情報がインプットされてあるんだ」

「でも、いつも用心にこしたことはない、不注意は罪だからね、ホッホッホッ!」

二分後には、僕達は誰にも見えない状態で、ビンカの都市、それもちょうどビンカの家の真上にいた。モニターのスクリーンをとおして家の中を見た。

(例にもれず)かなり醜いテリがひとり、くつろいだ様子でイスに腰かけて新聞を読んでいた。でも、このけだも・・・(おっと!失礼)、この人はとてもきちっとした服装をしていた。

頭と手には緑色の長いふさふさとした毛が見えたけど、よくとかしてあってツヤツヤしていた。彼の前には、編みものをしているスワマの女のひとが座っていた。

「私のおじさんとおばさんよ。ねー、私、ここよ!」

「ビンカ、聞こえないよ、幸いなことにはね。もし、君がこの円盤の中にいるなんてわかったら・・・」

「でも、いつかはわかっちゃうよ・・・だって、ビンカが地球に行けるように、ゴロおじさんに頼みにきたんだもの」

「なんとか、ゴロを説得するよい方法を考えよう・・・何日も、もしかすると何週間もかかるかもしれないけど」

「そんなに!」

「イヤ、それどころか、何カ月、最悪の場合は何年もかかるかもしれない」

驚きのあまり、僕達が口をポカンと開けているのを見て、アミは少しびっくりしたふうに、
「そんな顔しないでよ・・・ごめんね。楽観的にいこうと決めたのに、僕自身で忘れてしまったよ。でも、あまり非現実的なのもよくない。

石のように頭の硬い人が相手だ。向こうの立場になって考えてごらんよ。大切な女の子を、聞いたこともないよその惑星へ行かせるんだよ。しかも、連れていくのは宇宙人なんだから・・・わかった?説得するのがどんなに難しいかってこと」

少し考えれば、直ぐわかることだった。急にみんなしょんぼりしてしまった。

「でも、信念を捨てちゃダメだよ。今夜のところは、みんなそれぞれ自分の家へ帰って寝ることにしよう。明日、また、迎えにいくよ。説得出来るまで、これまでと同じように生活していこう。ビンカ、この話はまだ、おばさんにしかしちゃダメだよ。

あせらず、少しずつやっていくことだ。たった一日でなんとかなる問題じゃない。ペドゥリート、クラト、僕達はモニターで彼女の反応を見ていこう」

「わかりきったことだわ・・・私が空とぶ円盤に乗って、遠くの惑星へ行きたがってることを知ったら、二人とも大喜びよ。喜びのあまり、私を病院につれていくわね!きっと」

「でも、もし君のおばさんが”UFO”を見たとしたら・・・」
とアミは元気づけるような笑顔で言った。

「おばさんに、円盤を見せるようにするの?」

「必要であればね。もし、上の許可が下りたらの話だけど。勿論今直ぐってわけにはいかないよ・・・」

ビンカはいらだっていた。
「どうして今直ぐできないの?そんなに待てっこないわ!」

「ビンカ、少しずつってことが肝心なんだよ。慌ててやってもダメだ」

「おばさんにだったら、円盤を見せたって問題ないと思うわ。アミのほうこそ心配しないでよ。

ウフフフ、クローカおばさんは少しずつ、私の言ったことを信じるようになってきているし、みんな知っているように私の言ったことを筆記して、本にしたのは、おばさんなんだから。

勿論、最初のうちは、取りつくしまもなかったわ。でもおばさんは変わってきたの。あと一歩ってところまできているのよ」

「信じるようにって、ビンカ。君のおばさん、あの本に書いてあることの全てを?」
と僕は聞いた。

「全てってわけじゃないけど、キア以外の惑星にも知的な生命が存在しているってことは、今はもう受け入れているわ。おばさんのほうはそれほど難しくないの。問題はおじさんのほうよ・・・」

「きっとうまくいくよ。運がよければ、ビンカのトランクは、今晩にはもう僕の家だ。ひと部屋あいているし・・・」
と僕は希望に胸をふくらませて言った。

「ペドゥリート、楽観的になるのはよいことだ。でも、夢想的になるのはよくないよ」
とアミは親しみに満ちた目を僕に向けた。

「アミ、それ、どういう違いがあるの?」

「ンー・・・実際には全てが可能なんだよ・・・」

「本当に全てが全て?」
とビンカはうたぐり深く聞いた。

「ンー・・・無分別なこととか不合理なことをのぞいてね。当然だよね。たとえば・・・誰かが有名な演説家になりたいと望んだとする。

でも、彼には舌がなかったとしたら・・・。あるいは誰かがこの円盤のような宇宙船に乗りたいと考える。

でも、彼のハートは憎しみと嫉妬で一杯だったとしたら・・・でも、普通のことなら、本当に望んだことは、必ず実現するよ。それに必要なことを、きちんと踏まえてやればね」

「もう少し、よく説明してくれない?」

「うん、たとえば、木の種が大きな木に生長するには、それに必要な過程があるだろう。必要な時間とか養分とか手入れとかが・・・それと同じで、どんなプロジェクトにだって、夢にだって、願いにだって、それが実現するために必要な過程があるということに気がつかなければならない。

全てが可能だよ。でも、それに必要な時間と努力はどうしても必要なんだよ、わかる?」

「ムフロスのジュースの発酵と同じようにね。今日つくって、明日出来るというもんじゃない」
とクラトが口をはさんだ。

でも、僕は今夜にでも、ビンカが僕のそばで生活出来るかもしれないといううれしい可能性で、胸がはちきれんばかりだった。

アミは僕の考えをキャッチして言った。

「悲観主義者は間違っている。だって、全てが可能だからだ。

でも、夢想家も間違っている。だって、不合理なことと、本当の可能性の区別がつかない。あるいはなにかを実現するなり、手に入れるなりするのに必要な時間とか過程のことなんかが、全く頭にないからだ。

くりかえすけど、僕はゴロの頭の中について深く研究した。はたして彼を説得出来るかどうか。その結果は不可能、と出ている。

だから、我々は論理に反した試みをしようとしているんだ。ペドゥリート、これは短期間で直ぐに解決出来るようなものじゃない。

でも、悲観的にならないで、うまくいくように、信念をもっていこう。君はちょっと忍耐が不足しているということを反省していかないと。今夜は残念だけど、ひとりで家へ帰らなくちゃね、おばあちゃんが待っているし」

「”ベドゥリート”にはおばあちゃんがいるの?」

「うん」

老人は興味しんしんの様子だ。

「ウム・・・離婚しているの?・・・それとも未亡人?」

「違うよ!僕のおばあちゃんは聖女なんだから、離婚なんかするわけないんだ。それに、僕のおじいちゃんはちゃんと生きている。とっても気難しい人さ」
と僕は嘘を言った。だって、おばあちゃんは未亡人だからだ。

「できるだけ嘘はつかないように、ペドゥリート」
アミが僕に注意した。

「ああ、おじいさんはいないのか・・・じゃ、わしのこと”おじいちゃん”と呼んでもいいよ”ベドゥリート”」

みんなはいっせいに笑ったけれど、僕は少しも面白くなかった。
アミは、背の高い木々がうっそうと茂った、ビンカの家の中庭の上に、円盤を停止した。

「明日の朝早く、ここで待っているからね」
とアミはビンカに言った。

僕は、まるでビンカがこれから戦争にでも出かけるかのように、悲しい気分で彼女に別れを告げた。アミはいつものように、僕達の大げさなやりとりを見て笑っていたけれど、あのときに限っては、正しいのは僕達のほうだった。

ビンカにはそのとき確かに、醜い”戦争”が目の前に迫っていたんだから。僕達が次に会えるまでには、かなりハードなドラマを乗りこえなくちゃならなかった….。

彼女は円盤を降りて、玄関に向かって歩いていった。僕達は注意深くモニターに見入った。

「ただいま、おじさん、おばさん」
と部屋に入って、ビンカはおじさんにほおずりの挨拶をした。

「あんないやなやつにほおずりなんかして!」
と僕は叫んだ。

「静かに。彼らの話を聞こう」
そんな僕をアミがたしなめた。

「ねえ、クローカおばさん・・・宇宙人っていると思う?」
アミはそれを聞いてちょっと不快そうな表情で言った。

「全くビンカったら、なんの前置きもなしにいきなりだ!・・・なんてせっかちな女の子だ!それに最初は、まずおばさんにだけと話せって言っておいたのに・・・なんて不注意な子なんだ!」

「いないわよ、そんなの」
と、モニターの中ではクローカが、少しおどおどしながら答え、新聞の向こう側に隠れて見えないゴロのほうを指さして、黙るように合図した。でも、ゴロはそれを聞いていた。

「やれやれ、なんということだ!妄想にとりつかれている・・・この子は大きくなっても、普通の大人になれないよ。わしらに恥ずかしい思いをさせてくれなければいいが・・・」

「もし、私のこと、頭がおかしいと思っているなら、もう私ここからずっと遠いところへ行って暮らしてもいい?」

ゴロはびっくりして新聞を放りだし、ビンカをじっと見すえて、ちょっとだけすごんでみせた。

「いったい・・・なにが・・・言いたいんだい?」

かわいそうに、ビンカは青くなった。でも、直ぐに戦法を変えて言った。

「私は頭がおかしい女の子なんだし、一家の恥。だから、私なんかいっそどこかへ行ってしまったほうがいいんだわ」

と今にも泣きださんばかりだ(お芝居だってこと、僕達にはわかったけど)。
それを聞いてゴロは心を動かされたようだ。立ちあがって彼女のそばに行き、そっと頭をなでた。

「ごめんね、ビンカちゃん、お前の言うとおりだよ。わしは少しきつく言いすぎたよ。これからは家を出ていくなんて気持ちにさせないように気をつけるからね・・・」

「ウワーッ!ダメだ、これは!」
と僕はいらいらして言った。

「これは簡単にはいかんのう、ウム・・・」
とクラトはひげをなでながらつぶやいた。

「元気をだそう、みんな、元気を」
とアミは僕達をはげました。

ビンカは、僕達が彼女をずっと見ているのを知っていたので、天を仰いで、これから、どうしたらいいの?って顔をした。あれには、はりつめていた僕達の緊張の糸も、一瞬にしてゆるみ、みんな吹き出してしまった。

そのあとで、ビンカは新しい作戦を思いついて言った。

「たとえ私が、キア以外の惑星にも生命がいるって信じていても?・・・」
いいぞ、ビンカ、と思った。ゴロはビンカに優しく言い含めようとした。

「いいかい、お前のその妙な思いこみについてはだな・・・」
彼女は立ちあがり、いどむようにゴロを見つめて言い放った。

「私、空とぶ円盤を見たわ!」

「それはきっと、幻覚か夢か、なにかの自然現象だよ」

「ああそう、じゃ、今これからあらわれる円盤が幻覚かどうか見てよ!さあ、中庭へ行って、自分の目で確かめたらいいのよ、幻覚かどうか!」
とビンカはさけぶと、中庭へ出た。

アミは動揺して、頭をかきむしりながら叫んだ。
「ダメだ!ダメだ!そんなふうにしちゃダメだ!全く・・・みんな僕のせいだ。もっと注意深く、十分な指示をあたえるべきだった。なんてこった・・・」

「アミ、今がチャンスだよ。はやく円盤を見せてやれば・・・」
と僕が言うと、

「とんでもない!もしそんなことをしたら、ゴロはショック死するか、気がふれてしまうよ。それに僕ひとりの判断で、円盤を見せることはできない。

ちゃんとした理由がなければ、許可はもらえない。ビンカはもっと少しずつ、あせらずにやらなくっちゃダメなんだ。ちゃんと言ったのに・・・」

僕は自分の双子の魂のことはよく知っているので言った。
「わざとしたんだよ、アミ。彼女、せっかちだから」

「そうだよ!なんてバカなんだ、僕は・・・。それになんて反抗的なんだ、ビンカは・・・。これは全て僕のせいだ。ほんの少ししか自己コントロールのできない人を相手にしているんだってことを忘れていたよ。全く・・・とにかく、なにを言っているか、聞いてみよう」

モニターの中では、ゴロがとても心配そうに、クローカを見て言った。

「重症だ。はやく医者に診せたほうがいい。これはなにかの発作だよ・・・」

「ねえ、さっさと中庭へでて!自分たちの目で、直接確かめたらいいのよ。私は宇宙人と友達よ。私が言えば、円盤があらわれるわ。私の頭がおかしいかどうか、自分たちの目で確かめてみればいい!」

「ウッ・・・なんて、かわいそうな子・・・」

クローカは言って、顔にハンカチをあてた。正直いって、本当に彼女は気がふれたのではと思えたほどだった。こんなビンカを見るのは悲しい。

そして、これも全て僕達の愛から出た行動だと思うと、僕はとても責任を感じた。彼女のおじさんもおばさんも、ビンカは本当に気がふれてしまったのだと信じこんでいたので、中庭に本当に出てみようなどという考えはさらさらないようだった。

「アミ、このうたぐり深い人たちにいちど、円盤を見せてあげて、はやく!」
ビンカは逆上して、見えない円盤を見あげて言った。

アミはマイクを取りあげた。そのマイクは離れたところから、目指すところへ声を送ることが出来るものだ。

“ビンカ”

と僕の双子の魂の耳もとへ向けて、アミは話した。

「なに、アミ!?姿は見えないけど、私の耳もとで声が聞こえる・・・はやくきて・・・」

「ああ・・・なんてかわいそうな子だこと・・・」

「なんていうことだ、全く。クローカ、お前がちゃんと教育しなかったからだ、道を踏みはずしてしまったよ、この子は」

「あたしのせいじゃないわ、ゴロ。あたしの姉は、あたしがまだ、ほんの子供のころ爆撃を受けて、一瞬にして死んでしまったの。戦争の真っ最中に、あたしがこの子の面倒をみなくちゃならなかったのよ。誰も子供の育て方なんて教えてくれなかったし・・・」

“ビンカ、落ちついて、落ちついて”とアミが言った。

「どこにいるの? アミ」

“もっと声を落として、ビンカ。落ちついて。いいかい?円盤からマイクを使ってしゃべっているんだ。ゴロにはまだ円盤は見せられないんだよ”

「ああ、そうだったわ、今はおばさんだけね・・・クローカおばさん、直ぐにきて!」

「ダメだ、ダメだ」
とアミは叫んだ。

「まず最初、おばさんだけに、少しずつ話していくようにって言っておいたのに。そんなに突然、円盤を見せるわけにはいかないんだ」

「ちょっと、ビンカを見てくるわ・・・ああ、全くあの本、あの本がいけないんだわ」
とクローカが言った。

「そうだ、あの本だ・・・これからわしは精神科医の友人に電話するから、お前はビンカの様子を見てきたら、あの本を持ってきなさい。それから、近所に気づかれるとまずいから、なるべく、ビンカに静かにするように・・・」

クローカは中庭へ出て、ずっと空を見あげているビンカを、そっと抱きしめた。

「ねえ、アミ、今だよ。はやく円盤を見せてあげてよ」
僕は言うと、アミは計器盤を操作しながら、

「まず第一に上から許可が下りるかどうか聞いてみなければ・・・クローカがはたして、円盤を見たときのショックに耐えられるかどうか・・・えーと・・・」

別のスクリーンに、ビンカのおばさんの頭部のアップが、それから直ぐに頭の中がうつった。いろいろなエネルギーの閃光が沢山見えた。

でも、アミはそのスクリーンではなく、奇妙な記号が現れている、また別のスクリーンを見ていた。”ビップ”という音がした。

「いいぞ、リミットぎりぎりだけど、なんとか耐えられる。クローカに害は残らない。許可が下りたよ。じゃ、これから近距離でのコンタクトをはじめよう。かわいそうなクローカおばさん・・・」

円盤は視覚可能な状態になった。僕達はとても低いところにいて、ビンカとクローカのまわりを、ゆっくりと円を描くように動きはじめた。

「見て!見て!おばさん!」

ビンカはもうすっかり有頂天だった。おばさんは最初、全く取りあうそぶりを見せなかった。けれども突然、中庭が強烈な光に照らしだされてまっ白になったのに肝をつぶして、思わず空をあおいだ。

クローカの目が、それはそれは大きく見開かれた。その口も負けじと、大きく開きっぱなしになっていた・・・。

「これで十分だ」
と言ってアミはまた、円盤を見えない状態にもどした。十五秒ほどクローカに円盤を見せたことになる。

「見た?おばさん、あれが私の友達の円盤よ」

電話をかけようとしていたゴロも、家の外からものすごい光のきらめきを感じたらしく、直ぐに中庭に出てきた。そこには、大きく目を見開いてぽかんと口を開けたまま、放心状態で空を見あげている妻の姿があった。

ゴロも同じように空を見あげたけれど、当然彼の目には何もうつらなかったはずだ。やがてゴロは、急いで二人を家の中にひっぱりこんだ。ひどく心配している様子だった。僕はといえば、クローカおばさんがほとんど失神寸前だっていうのに、とっても幸せな気持ちになっていた。

「クローカ、どうしたんだ?いったいなにを見たんだ?」

ぼうぜんとしている妻をソファに座らせながら、ゴロはとても心配そうな様子で訪ねた。
「私の友達の円盤を見たのよ、決まってるじゃない」

「ほ、本当よ、え、え・ん・ば・ん・を見たのっ!!・・・本当だわ。この子は気がふれてなんかない、あたし、見たわ、ゴロ、見たわ!」

「ま、まさか・・・幻覚だよ。クロー・・・?・・・でも、わしもとても強い光を見たぞ・・・あれはなんなんだ!・・・でも、空にはなにも見えなかった・・・」

「おじさんはまだダメ。だって、その準備ができてないから。だから、私の友達は、おじさんが外に出てきたときに、円盤が見えないようにしたの。だって、おじさんが、ショックのあまり気がふれたり、死んじゃったりすると困るから」

ゴロもよろよろとソファに座りこんだ。目を閉じ、こめかみに手をやって、なにごとか考えはじめた。

「空とぶ円盤・・・目に見えない・・・これはきっと悪い冗談だ・・・。もっと根拠のある説明が出来るはずだ・・・クローカ、本当に見たのか?」

「勿論よ、ゴロ。幻覚なんかじゃないわ。本当にこの目で・・・」

「隕石じゃないのか・・・流れ星とか・・・」

「銀色をした金属の?・・・」
とクローカ。

「うむ、じゃ、飛行機かもしれない・・・」

「まるい?」

「じゃ、惑星だろう・・・」

「ピカピカ光の色を変えながら、クルクル家の上をまわって・・・それに、お腹のところには何かマークが描かれてあっても?・・・」

「マークだと?どんなマークなんだ?」

「ゴロおじさん、私の本にでてくるマークよ。翼のはえたハートのマーク。全て本当のことなのよ。私、アミの円盤に乗って本当に別の惑星に行ったのよ」

僕達はあの会話を聞いていて幸せだった。

「それだけじゃないの、彼らは今、モニターを通して私達を見ていて、私達の会話は全部聞いているのよ」

「彼らだって?あの例の本の、アミとかいうヤツのことしか聞いておらんぞ」

「うん、でも、クラトもいるの。現代で最初にスワマに変わったテリよ。でも、なにも知らないでずっとウトナ山に隠れ住んでいたの。

クラトはあそこの人なの。それからペドゥリートも円盤にいるの。彼はキアによく似た惑星に住んでいて、私達は双子の魂なの。二人ともそれぞれの世界で使命を与えられて働いているの。私達は愛の神に奉仕しているのよ・・・」

空とぶ円盤、別の惑星の人、双子の魂、使命、愛の神・・・ゴロは、顔の横にはえた緑色の毛をひっぱりながら、このあまりにも突飛な(と彼なら思うだろう)話に聞き入っていた。

「いいかいビンカ、どうか、今の言葉はみんな、お前のファンタジーだと言っておくれ。現実とおとぎ話とを、まぜこぜにしちゃいけない。わしの頭は破裂しそうだよ・・・。

この宇宙は、お前が本に書いたようなものじゃない。あれは空想で現実じゃないんだ。
それとも、なんだね。わしはずーっと間違えているとでもいうのかね?わしだけじゃない。科学者だとか先生だとかジャーナリストだとか、常識ある大人たちはみんな間違っているということかね!?」

“そう、ゴロ、何千年ものあいだ、みんな間違っていたんだよ”
とアミがマイクを通して語りかけると、ゴロは飛びあがった。

「誰だ!」

「アミよ、ゴロおじさん。円盤にあるマイクで、どこにいる人にでも自分の声を聞かせることが出来るの」

“それに、彼はどんな言葉でもしゃべることが出来るんだな”と今さらながら、僕は感心していた。

「あたし、怖いわ、幽霊かもしれない・・・悪霊かも・・・」
とクローカはふるえ声で言った。

「おばさん、怖がることないわ、アミはとてもいい人よ。ちゃんとした生身の人間で、あの本に書いてあるとおりの人よ」

ゴロは、しばらくぶつぶつ言っていたけど、やがてひとつの答えを出したようだった。

「誰にわかろう・・・だが、はっきりしていることは、たしかにここに未知の科学技術があることだ。

でも、それはよその惑星のものなんかじゃない、そんなバカなことがあるものか・・・いや、ひょっとすると、そういうこともあるかもしれない・・・考えるだけでも、おろかしいけど・・・わからない・・・ヤツらには本当に敵意がないのかどうか、はっきりしない・・・きっと、お前を利用して・・・うむ、これはPPに連絡したほうがいい。

ひょっとすると、キアに攻め入ってくるつもりかもしれない。キアに対する脅威なのかも・・・」

「PPってなに?」
と僕がアミに聞くと、アミより先にクラトが答えた。

「おお怖い、政治警察だよ」

「ああ・・・」

「よりによってこんな職業を選ぶヤツもいるんだ。全くごりっぱなことだ」

クラトの言葉は皮肉たっぷりだ。それに続けて、さとすようにアミが言った。

「職業っていうのは、その人の魂の質を現像して、一枚の写真にしたようなものなんだ。だからって、職業で人を差別しちゃいけないよ。今にわかるけどPPにだってよい人はいるんだから」

「愛が・・・キアにとって脅威なの?」

モニターの中では、ビンカが、やや皮肉をこめた調子でゴロにたずねていた。

「トゥコの格好をしたチェグもいる」
と疑り深いゴロは言った。

「アミ、これは絶対、”羊の格好をした狼”っていうような意味だよ」

アミは笑って、
「そのとおりだよ、ペドゥリート。疑いの心っていうのはどの世界へ行っても同じだよ。いつも同じイメージを想像する。見たろ、テリの精神構造がどういうものか?

せっかく上の現実を受け入れられるってチャンスなのに、わざわざ自分の水準にひき下げないでは考えられない。たとえ受け入れられたとしても、それはただただ恐ろしいものでしかない。

なぜって、彼の頭の中の風景が、いつだってさむざむしいんだから、しょうがないよね。そして今、ゴロはやっと、キア以外の惑星にも生命がいるということを、半分だけ受け入れた。

でも、それは彼にとっては、当然邪悪な存在でしかないんだ・・・ああ、かわいそうなゴロ!全くあわれだよ!もし彼が、宇宙のもっと美しい世界のことを知ったとしたら・・・」

モニターの中では、あいかわらずビンカが頑張っている。

「ゴロおじさん、でも、変装していないトゥコもいるわ」

「もしそんなのがいたら、これほど素晴らしいことはない・・・でも、そんなの、いるわけない。いるわけない!」

“いない?当然だよ”
アミはマイクで話しはじめた。

“宇宙に存在する生命はみな、キア人と同じように野蛮でなければならない・・・当然のことながら、自分たち以上の文明世界や、自分たち以上に進化した人間は存在するはずはない。

キア星が何千万、何百万とある星や銀河系の中でいちばん優れていて、キア人こそが全宇宙生命の中で最高に進化したものなんだ。そうだろうゴロ?・・・”

ビンカもクラトも僕も、笑ってしまった。アミの皮肉を聞いて、ゴロはやや動揺しているふうだった。

「わしの知ったことか。わしはまともに顔を出せないようなヤツと話すことなどない・・・それも、顔があったらの話だが・・・少し考えねば・・・頭も痛いし、もうベッドへ行こう」

「でも、おじさん、まだ日も暮れてないわ」

「じゃ、お前たちはここにいたらいい。わしはベッドへ行って、お前の本を読んでみる。少し情報が必要だからな」

「おじさん、まだ読んでなかったの?」

「わしはまじめな本しか読まん。子供だましの・・・ウオフォン!(と大きなせきばらい)、じゃ、お休み。ああ、ビンカ。それからお前の友達、に、くれぐれも言っておきなさい。個人のプライバシーは尊重するように、隠しカメラで覗き見なんかするもんじゃないってな」

ビンカは笑いだし、こちらをふりあおいで言った。

「ねえ、聞いた?」

アミはまた、マイクを取って、
“おやすみ。最後に言っておきたいんだけど、あなたが考えているほど、全てがそんなに恐ろしいわけじゃない。もう少し、我々の言うことも受け入れるように。

それから、このことは決して誰にも話してはいけない。そうしないと問題がひどくこじれるからね、わかった?”

「わかったよ」
とゴロは嫌々ながら言うと、大きな音をたてて、自分の寝室のドアを閉めた。

アミはスクリーンを消した。

「考えていたよりも、ずっとうまくいった。いちどにかなりのところまで進んだよ。でも、まだよろこぶのは早い。テリの頭は世界の暴君の影響を受けているから・・・」

「それ、なんのことなんだ?アミ」

アミは、僕達にしたのと同じように、クラトに暴君のことを説明し、スクリーンでそれを見せた。

「(ブルッブルブルブル)・・・あ、ありがとう、アミ。もうけっこうだよ。今度はよいほうを見てみようじゃないか」

金の剣を持った若い男が現れた。でも、今度はスワマのような、ピンクのかみの毛と紫色の目、先っぽがとがった耳をしていた・・・。

「その世界に住んでいる人達が持っているイメージによって、モデルは変化するんだよ」
とアミが説明してくれた。

僕は、テリもこの神の代理人の影響を受けるのかたずねた。

「うん、そうなんだよ、ペドゥリート。この影響を受けるにつれて、少しずつ、テリでなくなってくる。やがて全てのテリがテリでなくなってくる。いつだって愛が勝利を手にするって決まっているんだよ。どうしてだか知っている?」

「ううん、わからない」

「だって愛は神だからね」
とアミは答えると、それを受けて、クラトがまじめな面もちで言った。

「そのとおりだよ、アミ。わしはそれを知っているよ。自分で体験したからね。わしがあの羊皮紙を書いたのは、ちょうどテリからスワマに変わりだしたときだった。そしてわしはテリでなくなった」

「テリでいながら、その啓発的な体験をしたの?」

アミがたずねると、クラトは力強くうなずいて言った。
「ゴロのようなテリのときにね」

「これでわかったろう?神は自分の迷い出た小羊を軽くあつかったりしないんだ(訳注:マタイによる福音書18章12-14節、ルカによる福音書15章4-7節)」
とアミが言うと、

「自分のなにを?」
とクラト。

「自分の迷ったトゥコだよ」

「ああ、わしもだよ、アミ」

「誰も軽んじたりしないのかい? クラト」

「どんなトゥコでもね。わしの山で迷っているのがいれば、直ぐに捕まえて、ウムム・・・辛いソースにつけて・・・ホッホッホッ!ところで、腹がすいたのう。家に帰ろう」

アミは笑いながら操縦枠を動かした。

「僕は君を地球に連れていってあげようと思ったんだけど。本当に向こうに住みたいのかどうか、その目で確かめたほうがいいよ、クラト」

「おお、それは素晴らしい!じゃはやく、このおんぼろマシーンで直行しよう。でも・・・はやく出発しないと・・・ここにあれがないかぎり・・・君たちはあれを使うのかどうかわしにはわからんが・・・」

「あれって?」
と僕は聞いた。

「トイレだよ」

アミが老人の考えていることをキャッチして、笑いながら言った。その大問題については、僕もおおいに興味がある。

「僕もいっぺん聞いてみたかったんだけどさ、アミ・・・君もトイレを使うの?」

「僕がどっかそのへんの、木のそばででもするとは思っていないだろうね」
とアミはなんだかゆかいそうだ。

「ということは、つまり、君も・・・」

「いったい僕をなんだと思っているんだい。僕はまだ、ずっと高い水準の存在みたいに、ただ愛の、太陽の、酸素のエネルギーだけを摂取して生きることはできない。クラト、そのうしろのほうにトイレがある。左から二番めの扉だよ」

「ほいじゃ、行ってきまーす」
と老人はトイレに向かって走っていったが、直ぐ戻ってきてしまった。

「あれ、トイレなんかじゃないじゃないか。なにもない、ただのがらんどうだ・・・」

「そのとおりだよ。説明するの忘れてた。ただ中に入って扉を閉めればいいんだ」

「わしはたしかに山男だが、それにしたってそんなきたないことはできないよ。あそこに水たまりをつくることなんか・・・排水口すらないじゃないか!・・・」

それを聞いてアミはもうこれ以上笑えないくらいの大笑いをして言った。
「ハッハッハッ、そうじゃないよ、クラト。中に入ったらなにもしなくていいんだ・・・」

「でも、わしはしたいんだよ・・・なにもしないんだったら、どうして中に入る必要があるんだ。なにもしないために?」

アミはなんとか笑いをこらえて、
「まず、あの部屋へ入って、扉を閉める。なにもしないでいいんだ。そのあと、ここに戻ってくればいい。そうすれば、もうしたくなくなっているよ」

「ああ・・・、つまり、その部屋はしたいのがおさまるところなんだ・・・でも、いつかはしなくっちゃならないだろう・・・ちっともわからない。ああ、もう我慢できない、とにかくいってくるよ」

直ぐにうしろの部屋から彼の声が聞こえてきた。
「アー・・・ッ、すっきりした・・・これはすごい!」

「アミ、これ、どういうこと?」

僕がたずねると、アミはすずしい顔で、
「いや別に。あの中に入ると何種類かの光線が働いて、君の身体からでてくる老発物を非物質化するんだよ。このトイレは前の円盤のよりも、ずっと進んだモデルなんだよ。

その光線っていうのが、この生きものにはこのウイルスはダメ、このウイルスなら大丈夫っていうのを見分けることも出来るんだ。それに合わせて殺菌したり、ウイルスの動きを抑えたりする。

だから、よその惑星へ行く人が、自分の持っているウイルスでその惑星を汚さないように、あの部屋を使ったりするんだよ」

僕が、”前の旅”で、進んだ惑星へ行ったときには、円盤から出ることができなくて、窓やスクリーンをとおして外の様子を見るだけだった。だって僕のウイルスが環境に悪い影響をあたえるかもしれないから。

「ということは、つまりこの円盤に乗れば、僕も、進んだ世界に直接降りられるってこと?」

「そのとおりだよ。あの部屋のおかげでね。でも、まあむしろ、ふだんはトイレとして使うことが多いんだけどね。今クラトが使っているみたいにして・・・」

「トイレットペーパーは使わないんだよね?ほんとにそれで平気なの」

「ウップ!・・・使わないよ、あんなもの。我々にしたら、あれは全く先史時代のしろものだからね、幸いなことに・・・」

「じゃ、おふろに入るときは?」

「同じだよ。身体や髪や着ているものについた汚れも、非物質化してしまうから」

「服を着たまま、おふろに入るってこと!」

「勿論」

「じゃ、君たちは、決して服を脱がないってこと?・・・」

アミは笑って、
「やれやれ、まただよ。どうして君は、ものごとをそう極端に考えてしまうんだろうね?・・・たとえ汚れてなくたって、ときどきは新しい服にかえるし、日光浴をするのも、裸足になって草の上を歩くのも、服を脱いで泳ぐのも気持ちがいいし・・・」

彼らも裸になって愛し合うのかどうか、僕が知りたがっているのをキャッチして、すかさずアミが言った。
「うん、そのとおりだよ、ペドゥリート」

「エッチ!」
と僕はおこったふりをして、アミのほっぺたを軽くつねった。

アミは笑いながら説明してくれた。
「我々にとって、”性”はとても尊いものなんだ。性については小さなころからきちんと教えられているから、そこに妙な興味だとか、意味のない嫌悪感だとかを覚えたりすることはないんだ。

性には神聖な力がある。新しい生命を生みだすのは勿論だけど、愛し合う二人の人間がわかり合い、より深く結びついて、高め合っていくのを助けるんだ。つまり、愛する人への最高のプレゼントになるんだよ。だから我々は決して、性をちゃかしたり、バカにしたり、憎んだりはしない」

クラトが戻ってきた。

「あ~、まるで生まれ変わったようだ!あそこはいったいなんの部屋なんだ、アミ?トイレに行ったはずが、ふろに入ってせんたくしてきたみたいな気分だよ。服は洗ったばかりのにおいがするし、髪の毛はきちんととかしつけたようになっているし・・・あれは魔法だよ!アミ」

「たんに技術だよ、クラト。それだけのことだよ」

僕もその技術とやらを体験してみたくなった。

・・・うわ~、これはすごいや!・・・クラトが言ったとおり、ほんとに魔法みたいだ!!・・・。

僕はすっかり興奮して、操縦室に戻るとアミに叫んだ。

「もしこんなものが家にあったら、もっとおふろに入るよ。時間もかからなければ、寒かったり熱かったりもしない。それにシャンプーが目に入ることもない。石鹸で足をすべらすこともなければ、ふろ場をびしゃびしゃにすることもない。タオルを使う必要もない・・・ああ、地球もはやくオフィルのようになーれ!」

「ペドゥリート、でも、それは自分たちで手に入れなくっちゃならないんだよ。暗闇が生みだす毒素や汚れを根気よく洗い流して、あたかも愛という洋服を着るように、君自身にも君のまわりの人にも、愛がみなぎるようにならなくてはいけない。

そうやって暴君の力が弱まっていって、ヤツの支配から誰もが自由になったとき、我々は、はじめて姿をあらわすことが出来るんだよ。なぜなら、そのときはじめて、人々が我々の開かれた、おしみない援助に、応えられるようになるからなんだよ・・・さあ、地球に着いたよ」

「”ベドゥリート”の惑星、とても美しいよ」

「でも、僕達は、それを破壊しているんだよ、クラト」

「キアではヤツらが同じことをやっている」
とクラトが言った。

「”ヤツら”って?」
とアミがたずねると、

「勿論、テリのことに決まってるじゃないか。わしは、そんなことはしとらん。わしはわしの山で、なにも悪いことなんかしていない」

「でも、よいこともなにもしてない。何に対しても干渉しない。まるで、自分にはまったく関係ないみたいにね。もし誰ひとりよいことをしなかったら、憎しみや無情の支配する時代は、何千年も続いていくよ・・・」

「わしにはなにもできないよ、アミ。テリを殺しにいくことなんかできないし、教えることだったら、もうしたよ。羊皮紙を書いた。だから、今は静かに生活する権利があるはずだよ、ホッホッホッ!・・・なにか、そのへんに食べものはないかね。胃袋がからっぽだよ」

「全く、この老人は、自分に都合が悪くなると、直ぐ話題を変えるんだから。これがクラトのいつもの手なんだよ」

「いやいや、マジメなところ、本当におなかがペコペコなんだよ、アミ」
と、なおもとぼけた調子だ。

「じゃあ、僕もマジメなところを言うけど、奉仕する仕事は決して投げだしちゃいけないんだ。いちどだけよいことをしたらあとはハイ、サヨウナラで、その利子で生きていくなんてね・・・本当に神と調和したひとは、奉仕する仕事をやめられなくなるものなんだよ」

「どうして?」
と僕。

「愛さずにはいられないからさ・・・だから文明世界では、誰も”退職”しないし、”ストライキ”もやらない。社会に対する自分の仕事の手をぬこうとするひとなんか、ひとりもいないんだ」

「本当に?」

「本当だよ。そして、これも本当のことだけど、銀河系当局は、一人ひとり、そのひとにいちばん向いている仕事を頼むんだよ。そうするとやっぱり、やるほうのやる気もやりがいも、全然違ってくるからね」

「そうなんだ・・・地球じゃそんなことあんまり考えてもらえないよ・・・だから、一人ひとりが、出来る範囲でなんとかやっている・・・」

「そうやって、沢山の適性や才能を失ってしまうんだ。地球には改善しなくてはならないことが沢山ある・・・僕にとっては、仕事がいちばんの楽しみなんだ。

たしかに、僕は仕事をとおして、報酬を受けているよ。さっきも教えたブーメランの法則、つまり原因と結果の法則が働くからね。

でも僕は、仕事をしながらそんなことを期待したりしたことはないよ。仕事が出来るってことだけで、もう十分に満足なんだ。奉仕出来るってこと自体が、楽しくってしかたがないんだから」

アミの言葉を聞いて、僕は少し考えこんでしまった。たしかに僕は二冊の本を書いたけど・・・。・でもそればっかりじゃない。広場や温泉場のゲームセンターで沢山の時間をつぶした。

それにパソコンのゲームにもずいぶん熱中しちゃったし、インターネットでなにか面白いものはないか探しまわったり、ずーっとテレビを見ていたり・・・。

僕の考えていたことをキャッチしたアミが、笑って言った。

「そんなこと、これっぽっちも言ってないよ!あんまり自分を責めたりしないでね。奉仕したいって気持ちは、徐々に育っていくものなんだよ。僕もかつては君のようだった。

だから、きっと、君はいずれ僕みたいになるよ。安心して。何事も全体とのバランスをとりながら、少しずつ変わっていくものなんだから。

もしまだ、奉仕への欲求が生まれていないなら、なにもすることはない。人に言われたり、自分で決めて義務的に奉仕しなければならないというものじゃないんだ。

愛に関することは、全て自由であって、決して義務じゃない。もし、自由でないとしたら、それは愛には属していない」

「おなかがすいているときも愛はない。ホッホッホッ!」
クラトは本当に空腹だった。

「ペドゥリート、クラトに”クルミ”をもってきてあげて」

最初の旅で食べた、あのとても甘くておいしい宇宙食のことだ。

「これ、食べられるのかい?」

「勿論。ひとつ食べてごらん」

「どれどれ・・・ウム・・・プーッ!まずい!甘い”トパ”みたいだ。ちっともからくない・・・この子の家へ行こう。そうすればきっと、おばあちゃんがわしのからっぽの胃ぶくろに同情してくれて・・・」

「じゃ、行こう。でも、円盤を降りることはできないよ、クラト。宇宙人を見たら、みんなびっくりするからね」

「宇宙人は君たちのことだ。わしじゃない。ウッ!ここじゃ宇宙人はわしのほうか・・・じゃはやくこの子を家に帰して、直ぐキアに戻ろう。家でガラボロのピリッと辛いソース煮が待っている・・・ガラボロが鳴いているのが聞こえるよ”早く帰ってきて、クラト。早く私を食べてー”ってね。ホッホッホッ!」

僕達は温泉場に着いた。夜空には星が一杯輝いていた。

「よかったら一緒に行ってもかまわんかな、”ベドゥリート”? おばあちゃんを紹介してくれんかね?」
クラトがまた冗談を言う。

「とんでもない!おばあちゃんを辛いソース煮にされちゃこまるからね」

「どうして?・・・やわらかい肉、しているのかい?ホッホッホッ!」

「ペドゥリート、明日の朝早く、松林で待っているよ」

とアミは円盤を降りようとしている僕に声をかけた。円盤を降りるときに悲しくならなかったのは、あのときがはじめてのことだった。

今度は長い別れじゃなく、たったのひと晩ねたら、またみんなに会えるからだ。勿論、ことはそう簡単に運んではくれなかったけど(とんでもないことになってしまうんだ!)、そのときは幸いにも、そんなこと知るすべもなかった。

アミは僕を、いつもの岩場に降ろした。海岸の岩の上のハートのマークのそばに降りてから、空を見あげてみた。でも、そこにはキラキラと輝く星以外は、なにも見えなかった。

>>>「アミ 3度めの約束」第4章 宇宙のおばあちゃん

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