宇宙人アミ

「もどってきたアミ」第5章 気づかない本質的な欠点

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第5章 気づかない本質的な欠点

僕たちが乗った円盤は、キア星に向かっていた。

円盤は光のような遅いスピードで”飛行”するのではなく、たんに”位置する”だけ、つまりなんだかとても難しい時間・空間の”収縮と屈曲”だとか”ゆがみ”だとかいう方法によって、一瞬のうちにどこにでも行くことができるのだと、アミは前回の旅で教えてくれた。

僕たちがどこかに”位置”していると、いつも星は決まってのびたようになって、そのあとで白く輝くもやがあらわれた。
それが今、まさに起こっていた。

窓の外を見ながら、僕は光に慣れていない人に沢山の光を見せるのはよくないというアミの発言について考えていた。

もちろんアミが、僕の考えていることをキャッチしているのは知っていたので、こう言った。
「なんとなくはわかるけど、光に慣れている人に闇を見せるのはよくない、こっちのほうはどうもよくわからない」

それを聞いていたビンカが、
「死ぬほどショックを受ける」

不意に言ったので、僕はビックリした。
「ビンカはそのことがわかるの?」

「ううん・・・」

「じゃ、どうして?」

「ただ、さっきアミが言ったことを繰り返しただけよ。私もよくわからないわ。アミ、それどういう意味なの?」

「うん。例えば、ある種の悲惨な生活というものを知らないでいる人には、急に”闇”を見せないほうがいい。徐々にいかないとね。例えば死骸を見せることとか・・・」

「でも、それはそれほどショックでもないわ」
ビンカが、たくましい口調で言った。

「じゃ、腐敗した死骸は?」

「キャー!よ、よくわかったわ」

「それと同時に、人の内面の闇をも指しているんだよ」
アミはときどき、気をもたせるような言い方をする。

「もうこのへんで、謎めかした言い方はやめてはやく説明してよ」
とアミに向かって言った。

「うん。つまり、多くの人が自分自身のことを素晴らしい人だと思いこんでいるんだよ。自分の持っているいくつかの欠点を、全く直視することができないでいる。その欠点は、ときにはとても重症だ。

でも自分では気がつかないその欠点を、まさに他人の中にみいだすと、その人を人一倍激しく非難するということがいつも起こるんだよ。

そして突然人からその欠点を指摘されようものなら、死ぬほどひどいショックを受けるんだ。いつも自分を美しいと思いこんでいた”みにくい、幸せ者の小さな人”の話を知っているかい?」

「ううん、知らない」

「それまで一度も鏡を見たことがなかったんだ。そして、はじめて鏡を見たときから悲馴がはじまったんだ・・・。わかるかい?」

今度はふたりともウンとうなずいた。

「我々を愛からひきはなしている、エゴという自分の中のみにくい部分には、それを支えてしばりつけている根があるんだ」

「その根って?」

「一番大きな本質的な欠点だよ。我々にはいくつもの欠点があるけれど、その中で一番重症なやつだ。それががっちりとエゴを支えているんだ。ちょうど土に埋まって外からは見えない木の根のように、自分で見つけるのはたやすいことじゃない。

他人のほうがずっと見つけやすい。でも他人からそれを知らされると、自分を美しいと思いこんでいたみにくい、幸せ者の小さな人、と同じように、我々のかわいそうなエゴはその支えを失って、我々は死ぬほどショックを受けるよ・・・」

僕はどうもこの話に納得できなかった。
「なんでなの?もし、エゴがなくなったとしたら、もっとずっと幸せじゃない、純粋な愛にもより近づけるわけだし・・・」

「まだひとりでは泳げない人からいきなり”救命具”を取ってしまったら、大変なことになるよ!・・・」

「またまた、謎めいた言い方をして。それ、どういうことなの?」

「ある程度までの水準の人生において、エゴは一種の”救命具”のような保護者的な役目をしている。

でももし、もっと上の水準に進歩したければ、その重い”救命具”つまりエゴのことだけど、それを一緒に持っていくことはできないんだ。

まず、ひとりで泳ぐことを学ばなければならない。いつか、二者択一しなければならない時機というものが、やってくるんだよ」

「その”泳ぐことを学ぶ”ってどういう意味なの?」

「宇宙の法にのっとって生きることを学ぶということだよ。もし愛とともに生きていけるなら、他にはなにも必要じゃない。

でも、まだきみたちは愛をどうやって手に入れたらいいのかも知らないでいる。それだからこそ、これからキアに行く意味があるんだ」

「アミは僕の基本的な欠点を知っているの?」

「もちろんだよ。マンバチャよりも醜いやつをね」
とアミは笑って答えた。

「なんだって?」

「マンバチャだよ。地史時代のとても醜悪な動物のことだ」

ビンカは、かなり迷ったあげくに言った。
「私もその醜悪な欠点を持っているの?」

「もちろん。チャチャカ これも同じく先史時代のみにくい動物のようなグロテスクな欠点をね。そうでなかったらビンカはキアにおいて使命を持って働いていないよ・・・」

「えっ!私が使命を持っているって?その使命って?」

「僕の本質的な欠点ってなんなの?」
ふたりは同時に質問した。

小さな宇宙人は赤んぼうのようなやわらかい笑いを見せて言った。
「ふたりの質問にいっぺんには答えられないよ。まず欠点について、その次にそれぞれが持っている使命について説明していこう」

「使命?僕にもなにか使命があるの?」

「これで質問が三つになったね。欠点については、今ここで言うわけにはいかない。なぜなら、予期しないあまりにもみにくい現実を知らされて、それに耐えられるだけの用意ができていないから。

きみたちはまだ”救命具”無しではひとりで泳げないんだ。だから二次的な欠点を少しずつ示していくことにしよう。これは、三人にとってそうとうデリケートな、しかもきつい仕事だ。ペドゥリート、前にきみのみにくい部分を指摘しただろう?」

「ああ、あの”中傷”のことか」
アミに非難されたことを思い出して、僕はふたたび不愉快になった。

アミはまた笑った。
「いつも、同じだよ、自己防衛の反応というのは・・・。”中傷” “不正” “侮辱” “非難”。だけど、最初の一撃はすでに加えてある。

そのことをきみはもう少なくとも自覚している。エゴのひと枝はもう折られている。いちど欠点を見て受け入れられたら、あとはそれと闘うことができるようになる・・・。

ときにはそれを受け入れるのに時間がかかるとしてもね」
アミは僕の様子を見て続けた。

「こうやってだんだんと基本的な欠点には近づいていける。でも同時にひとりで”泳ぐ”ことも学んでいかないといけないけど・・・」

「ところで、使命のほうは?」
ビンカはもう待ちきれないといった感じで質問を切り出した。

僕はまだそのとき、アミの言う僕の欠点やエゴについて、はっきりとはわからなかった。そして相変わらずアミが僕を攻撃しているように思えて、とても不快だった。

「ペドゥリート。僕がきみに言ったことは、きみだけでなく全ての人にあてはまることなんだよ」
アミは僕の考えていることをキャッチして言った。

ビンカはなおも繰り返し言った。
「じゃアミ、今度は、使命のほうを教えて。私たちどんな使命を持っているの?」

「きみたちは、僕の言ったとおりに本を書いただろう」

「ええ」

「うん」
ビンカと僕は同時に答えた。

「エッ?きみも?」

「じゃ、あなたも?」
また、ふたりは同時に言った。

「ふたりとも、僕と出会った体験を本に書いた」
そう言ったあとで、アミは僕たちふたりの驚く様子をたしかめるように、見つめていた。

僕は興味津々でビンカに聞いた。
「きみの書いた本のタイトルは?」

「アミ小さな宇宙人」
とビンカは答えた。

「エッ?それは盗作だ!!」
僕はおどろいて言った。

アミはおなかをかかえて笑った。

「どうして盗作なの?」
ビンカは無邪気な視線で僕を見た。

「だって、それは僕の書いた僕の本のタイトルだよ」

「そう、でもなんて美しい偶然なんでしょう!で、あなたはなにについて書いたの?」

「ええと、アミとの出会いとか、僕のおばあちゃんのこととか・・・」

「私もアミとの出会いのお話。でも私、おばあちゃんはいないの。文明世界デバスタンへ行ったわ。それからルックナとフィルス。そして色彩の世界にも・・・」

「静かに!」
操縦盤から高い音が発せられていた。赤い光がチカチカと点滅しはじめた。

「赤警報だ。素晴らしい!」
アミがさけんだ。

「どうして赤警報の鳴るのが素晴らしいことなの?それどういう意味?」
とビンカがちょっとおどろいて聞いた。

「地震が近づいているんだ。ちょうどいいチャンスだ!」

「地震だって?」
僕はとても不安になった。

「うん、地球でね。今、地震の震動を減少させる作業をしているんだ。見学するいいチャンスだ。地球に戻ろう。その後でキアに行こう」

「じゃ、きみたち地震を防ぐこともできるっていうことなの?」
僕は好奇心にかられて聞いた。

「ときどき、しかもほんのいくつかの地震だけだよ。仲間の円盤が沢山、地球を地震から守る仕事にたずさわっているんだ」

「仲間って?」

「”宇宙親交”の仲間だよ」
アミは操縦桿を動かしながら言った。

僕は頭をかいて言った。
「これはちょっとややこしいことになった」

ビンカも同感というようにうなずいた。

「今度の二度目の旅はきみたちにとって一級上のレベルになるんだ。でも心配することないよ。少しずつ説明していこう。

まずきみたちの使命についてだけれど、これから言うことは、もう当然きみたちは知っておかなくちゃならないことだから言うけど、じつは、きみたちは、もともと自分たちの生まれた惑星の出身ではないんだ。

ビンカ、きみはキアの出身ではない。そしてペドゥリート、きみは地球の出身ではないんだ」
と言って、アミは僕たちの驚いた顔を楽しむかのように、足を組みかえて、イスに座り直した。

「そんなこと考えられないわ!私はキアに生まれて、ちゃんと戸籍もあるし、クローカおばさんは私のおしめを取りかえたって言ってたわ・・・」

「僕だって地球に生まれたのはたしかだし、僕のおばあちゃんは・・・」

アミは笑って、僕の言葉をさえぎった。
「そのとおり。きみたちはそれぞれの惑星に生まれた。でも、本来は、その惑星の出身じゃないんだ」

「えっ?でも、ある人があるところで生まれたら、その人はそこの出身になるんだよ」

「必ずしもそうとは言えない。きみたちは未開世界に生まれた。でもきみたちの魂は”親交世界”からきているんだ。きみたちは自分の使命を果たすために、それぞれの惑星に生まれてきたんだよ・・・」

>>>「もどってきたアミ」第6章 ペドゥリートとビンカの使命

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