宇宙人アミ

「もどってきたアミ」第9章 いよいよキア星へ

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第9章 いよいよキア星へ

僕たちの乗った円盤の外側が強烈に輝きはじめた。およそ五百メートルくらい前方に貨物船の光が見えてきた。

「乗組員たちの顔を注意して見ていてごらん」
アミはスクリーンを指さして言った。

船員たちは、まるで化け物でも見たかのような表情をして、デッキからこちらを見つめていた。

彼らのひとりが銃を手にとるのを見て、アミの視線になにかもの悲しい影がよぎった。

「これが未開世界に住んでいる人間なんだ。攻撃的で暴力に満ち満ちている。

自分たちの世界の生活が過酷なのは、地球と地球人が進化のいまだ低い段階にあるからなんだということが全くわからず、宇宙の全てが地球のようなところだと思いこんでいるんだ。

でも、結局はみんな一人ひとりが、自分の想像しうる世界の中に住んでいるんだからね・・・」

艦員が発砲しはじめた。
もうこのときは恐怖を感じるかわりに、深い悲しみの念が僕の胸にこみあげてきた。

ただ奉仕するためだけに生きている兄弟たちに対して、あの男のなんという不当で攻撃的な態度・・・。

発砲はなおも続けられ、僕の悲しみはいつしか怒りへと変わっていった。

「アミ、こんな人たちを虫けらのように光線銃で焼き殺してしまいたいと思ったこと、いちどもない?」

アミは答える前に少し笑って、
「うん、前にも言ったように、僕の水準は司令官のようには高くない。ほんの数秒にしろ、僕の頭の中にそういった考えがよぎらないとは言えない・・・僕の中の動物としての未発達な部分がね。

でも直ぐにあまり進歩していない人間というのは、子供のようなものだということを思い出すよ。おもちゃの銃でおどしている子供を許して上げるくらいのことはしてあげなくちゃね」

それを聞いてビンカは僕に問いかけた。
「それどういうこと?よくわからないわ、私」

「とてもはっきりしたことだよ」
と僕は言った。

「でも、私よくわからないわ。だって前の旅で、進歩した精神は子供のようだって言っていたのに、今度は少ししか進歩していない人のことを、子供のようだなんて言うんだもん・・・」

「同じ”子供”でもそのふたつの”子供”のあいだには雲泥の差があるんだよ。わかる?」
とアミが言った。

「全然」

「賢者はあまりしゃべらない。粗暴な人もあまりしゃべらない。同じ”しゃべらない”でも両者にはとても大きな進歩の差があるだろう。わかる?」

「ちっとも」

「”子供”という言葉は、例えば気まぐれな人や強情な人、短期な人やかんしゃく持ちの人、臆病な人や他人を傷つけるようないたずらをする人、などという意味に使われる。この場合の”子供”とは、少ししか進歩していない人のことだ。

そして同じ言葉が今度は、善良な人、繊細な人、善意を持った人といった意味にも使われる。長い進歩や進化の結果、魂はそうした子供のように純粋になっていくんだよ」

「ああ、今、はっきりわかったわ」
とビンカは言った。

「きみたちの本は、後者の人のために書かれている。精神的な真実は、このとても健康的な子供の感覚を通してのみとらえられるんだ。

この精神を持っていない人、つまり、”大人”は、因襲的な考えやみんなに受け入れられたことや、そのときどきに支配的な理論や流行や習慣にそれらが一致していないというだけの理由で、いとも簡単に拒絶してしまうんだ。

こうして本にこめられている重大なメッセージの本質など全く理解せずに終わってしまうんだよ」

ビンカも僕も全くチンプンカンプンといった顔つきでお互いを見合った。

「いったい、なにが言いたいの?」
と僕は聞いた。

「もっと先になったらわかることだよ。じゃ、これからキアへ行こう、キアへ!」

窓の外にいつもの白い霧があらわれた。アミはイスのうしろ側にある戸だなのほうへなにか手びき書のようなものをさがしに行った。そして、スローモーションカメラでうつしたような、とてもゆっくりとした不思議な跳躍をした。

僕はびっくりして聞いた。
「それいったい、どうやってやるの?」

「それってなにが?」
アミはとぼけたように言った。

「その跳躍だよ。まるで宙に浮いてるような、前にもいちど海岸でやったようなやつさ・・・」

「ああ、よく見てて」

アミは目を閉じて意識を集中した。ゆっくりとイスの上を浮上しはじめた。上にあがったとき、突然目を開け、僕たちにウインクした。そのとたん、ズシンとイスの上に落ちた。

「力と冗談は両立できないんだ」
と言いながらアミは身体を起こした。

「どうやってやるの?それ!ねえ・・・」
ビンカは夢中になって聞いた。

「うーん、これ・・・どうやって説明したらいいのかなあ・・・やりとげたいって熱望するんだよ。できるんだって実感することだよ。

欲することはひとつの愛のかたちだし、愛は宇宙の最大の力だからね。そのうえ信じる人には山でも動かせる(訳注:マタイによる福音書21章21節)。誰でもそんな力を持っているんだ。その力でね。見ててごらん」

イスから立ちあがるとアミは窓の近くまで行き、こっちを見てはずみをつけた。ゆっくりと空中を浮かびはじめ、そのまま僕たちのそばまできた。

「すごーい。信じられないわ!ね、教えて、お願い!」
とビンカはアミの腕をとった。

彼は笑って、
「とても優しいんだよ。意欲は力だ。欲すればどんなことでもできるんだ・・・」

さっそく、ふたりで挑戦してみた。でもほんのちょっとはねあがることしかできなかったので、ふたりで大笑いしてしまった。

「アミ、僕は以前海岸できみと一緒に飛ぶことができたっていうのに、今は全く不可能だよ。どうしてなの?」

「ああ、あの夜は手を握りながらやったろう。僕がきみにエネルギーを送ってあげたんだよ」

「エネルギー?でもどうやったら人から人へとエネルギーを送れるの?」

「もっと先になったら、いずれはきみたちも学校で習うようになるよ。文明世界でやっているのと同じようにね。でもその前にまず、野獣のような殺し合いをどうしてもやめなくっちゃならない。今のところ、さしあたって一番重要なことは、平和を手に入れることだ。

でもその前に公正と統一を実現できない限り、平和は手に入らない。富んだ国と貧しい国があるあいだは平和はありえない。たったひとつでも国境があるあいだは、そして、宗教に違いがあるあいだは平和にはならない。

権力を手に入れるために働き、苦しんでいる人や困っている人に対してなにもしないのは、土台となる基礎を築かずに建物を建てるようなものだ。そして、もし、いつかそれらがみな解決したあとには、僕の敬愛する友人クスがするようなこともできるようになるんだよ」

「クスって誰?」

「とてもゆかいな僕の友だちさ。信じられないようなことが沢山できるんだ・・・」

「どんな?」

「じゃ、ちょっと彼を呼んでみようか?知り合っておくのも悪くないからね」

「でも、どうやって?ラジオで?それとも電話で?」

「いや、マインドを通して呼んでみよう。そのほうがずっと早い・・・。おいで、床に三角形になって座ろう。ビンカはここ。ペドゥリートはここだ。そう。じゃ今から三人で彼に意識を集中しよう。目を閉じて、クスのことを頭に浮かべ、彼にここにくるように言おう」

僕たちはアミの言うとおりにした。そして少ししてから、アミは僕たちに、よく注意して見ているようにと言った。白い霧が僕たちの前にたちこめてきて、うずを巻きはじめ、そのあとそれは人のかたちへと変わっていった。

ビンカはおどろいて逃げ出そうとしたが、アミの笑い声を聞いて、やや落ちつきを取り戻した。

「誰かな?僕を呼んだのは」
とどこからともなくあらわれた人が言った。白い服を着た若い男だった。僕はびっくりして、声も出なかった。

「地球からこのおんぼろ円盤までわざわざ出むいてこさせるからには、それなりに重大な理由があるんだろうね」
若い男はほほえみながらアミに言った。

「いや、本当はね、クス、この子供たちにどうやったら友だちを呼べるかを教えてやりたかっただけのことなんだよ」

「ああ、それなら重大な理由だ。子供たちになにかを教えるということは、いつだってとても重大な理由だからね」
とクスは冗談半分のように言った。

「きみたちのちっちゃな頭には何百もの質問がいっぱいつまっているようだね。もう知っているように僕の名前はクス。”フルタイム”で地球の人々を非動物化する仕事に専念している。

僕はこんなおんぼろの乗りものに乗らなくても宇宙を自由に行き来できるんだ。きみたちもちゃんといい子にしていたら、いつか僕みたいになれるよ。いや、僕よりずっとすごくなれると思うよ。

僕のように三次元の未開世界のような低い次元に奉仕しなければならないような罪なんか背負って苦しまないでね。ハッハッハッーーー。

きみたちはかろうじて文明化した、ときにはきみたち自身でさえもほとんど住むのが耐えられないような世界にいる。想像してごらん、四次元の世界からきている僕のことを。まるで壊れたシュノーケルをつけたダイバーのようなものだよ」

「次元についてはまだほんの少ししか話してないんだよ、クス。彼らをこれ以上混乱させないでよ」
とアミがふざけて抗議した。

「わかっているよ。でも、そろそろ宇宙には沢山の住まいがあるってことを知っておく時期にきていると思うけどね・・・。きみたち、なにかびっくりするような素晴らしいことを見てみたいかい?」

ふたりともあっけにとられたまま思わずうなずいた。

「じゃ、ほら!」
とフランス語で言って、指を”パチッ”と鳴らし、とてもいいバラの香りのする煙を出して消え去った。

「本当にクスは特別だよ。僕の惑星がいくらわんぱく小僧の惑星だとしても、彼の惑星とくらべればまだまだ千年は遅れてる。僕なんかき真面目で、退屈な部類に入っちゃうよ」

「いや十万年の遅れだよ」
と幸運のウサギ、そう、あのバックス・バニーが操縦席のイスの背もたれの上にすわって、ほおを小刻みに動かしてニンジンを食べながら言った。

そうして最後にこうつけ足した。
「もし、きみが真面目で退屈なら真面目で退屈、それだけのことだよ。僕はもう行くよ、チャオ」

と言って、バニーはニンジンを僕たちのほうに投げて消えうせた。ニンジンは宙に浮かびながらゆっくりと美しい花に変わった。ビンカの瞳は、現実のおとぎ話を目のあたりにしてさらに輝いていた。

「いったいどうしてこんなことができるの?」

「たんに想像するだけだよ。でも、それを現実に投影できるような強い力が必要だけど」

「でも、この花は想像じゃないよ」
とデリケートなバラの香りを吸いこんで僕は言った。

「それは物質化だよ。四次元の意識を持っている人は、きみたちがとても信じられないようなことができるんだ。いつもおこたらぬ修練と信念、これさえ心がけていれば、すべては可能なんだよ・・・」

「どこにあるの?その四次元って」
とビンカが聞いた。

「どんなところにでもさ。ここにも、きみの部屋の中にも、全てのところにさ。場所じゃないんだ、意識の水準のことなんだよ。

この水準に達している人は視覚可能・不可能になるのも自由自在、壁を突きぬけたり、自分の姿かたちを変えたり・・・つまり別の法が支配するようになるんだよ」

「じゃ愛の法は関係していないの?」

「うわっ!なんてこと言い出すんだい!」
アミは動揺したようなふりをして言った。

「この宇宙の中に愛の法から逃れられるものは、なにひとつないよ。愛を上回るものはなにもないんだ。他のどんな法や力も、我々が目に見ることのできるこの宇宙やそうでない宇宙も、三次元だろうと五千次元だろうと愛からのがれられるものは全くない。

創造全体を支配しているのは、愛、つまり神なんだからね。別の法が彼らを支配しているっていうのは、例えば、引力の法則や時間や空間に影響されないってことなんだ。別の水準の振動を持っているんだよ。それが”宇宙の創造”に完璧なかたちで従事しているわけだよ」

その説明はとても奇妙に感じた。

「僕は神が宇宙をつくっているのかと思っていたよ・・・」

「そうだよ。でも、彼の創造物、つまり我々を通して神は宇宙をつくっているんだ。神が設計し、我々が遂行するんだ。もし、神が全てやってしまったとしたら、ずいぶん退屈な話だよ・・・。さあいよいよ着いたよ、キアへようこそ」

>>>「もどってきたアミ」第10章 太陽の師の存在

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