宇宙人アミ

「もどってきたアミ」第8章 地震から地球を守る仕事

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第8章 地震から地球を守る仕事

エレベーターを降りたあと、到着したときに通ったのとは別の廊下を通り抜けると
ドアがあいて、そこにキャプテンの巨大な円盤があらわれた。

いくつもの並んだ窓があり、その窓ガラスを通して、中に数人の人影が見えた。

すさまじいまでに大きな”飛行物体”を見あげ、ビンカも僕もため息をつきながら歩いた。円盤は大きな三本の脚に支えられていて、入口はその腹部にあった。

階段のところまでくると、キャプテンが階段に足をのせた。すると、それはエレベーターのようにゆっくりと動きはじめた。全員が乗りおえると、かなりのスピードで上昇したが”UFO”の内部に着く寸前に、ふたたびゆったりとしたスピードに戻った。

円盤の中に入りおえたところで、キャプテンは僕たちに言った。
「ここで地球の地質保護の仕事を指揮しています。別の円盤には、また別のキャプテンがいて違った使命にたずさわっています」

大広間に入ると、そこには何人もの、いろいろな外観をした人たちが働いていた。僕たちのほうを見て、ほほえみはするのだけれど、口に出しては誰もなにも言わなかった。

これだけの人がいて、ほとんど無言でいるということにとても興味をひかれた。アミは僕の疑問をキャッチしていて、僕たちがエレベーターに乗るとこう言った。

「頭というのは、ちょうどおしゃべり好きのオウムのようなもので、ほんの一瞬たりとも沈黙できないんだ。意味のあることをめったに言うわけじゃないくせに、たえず、話し続けることをうながす。

ここにいる人たちは、現実をもっとずっと正確に知覚しているんだ。それほど頭は使わずにもっと上の、別の機能を使っているんだ。そのうえ、我々はみなテレパシーが発達しているしね・・・」

「でも、アミ、そうは言ってもきみは少しも彼らのようじゃないよ」
と僕は言った。

「なにが言いたいのかな?ペドゥリート」

「きみは、僕たちと同じようによくしゃべるし、そのうえ、よく笑うし・・・でも、彼らはずっともの静かだよ・・・」

アミはそれを聞いて迷惑がるどころか、反対にキャプテンの笑いをさそうほどの大笑いをした。

「だって僕は、きみたちの水準に合わせなければならないからね。それにきみたちのうちのどっちがテレパシーで話せるっていうんだい?・・・それからもう何度も言っているように、僕の進歩度はきみたちと似かよっている。

さらに言えば、僕は遊び好きの世界からきている。僕たちは言ってみれば、いたずら好きなわんぱく小僧みたいなもんだよ。でも決して人を傷つけるようないたずらはしない。それどころか、その正反対だけどね」

「じゃ、どうして、アミが私たちに教えているの?もっとずっと進歩している人じゃなくて・・・」
ビンカがやや幻滅したような声で質問した。

アミはふたたび笑った。

キャプテンはなにか手びき書のようなものを見ていて、僕たちの会話にはあまり気をとめていなかったが、くちびるにはわずかな微笑が感じられた。

「じゃ、例えば司令官の上の兄弟のような人とか?」
とアミがビンカとのやりとりを楽しむように言うと、ビンカは目を輝かせた。

「そう、どうしてそれじゃダメなの?」

キャプテンは、今度は手びき書から目を離し、軽い驚きの表情を混じえた笑顔でビンカを見た。

アミは、またも大笑いをして、それがやっとおさまると、こう言った。
「ビンカ、でもその教えを受けるのに値する人といったら、司令官のような高い内的水準に達していなければならないよ・・・」

「そう、わかるわ。でも、どうして私たちの指導者が司令官のような素晴らしい人じゃダメなの?」

「それじゃ、聞くけどね。きみたち、彼の前で窮屈じゃなかったかい?僕に対するように自分の感情を素直に表にあらわせた?そして僕が言うのと同じようにちゃんと彼の言ったことを理解できた?」

ビンカは、いかにも自信たっぷりという様子で言った。
「私、とてもよく理解できたわ。なにか彼のそばにいると、まるで別の世界にいるようで・・・」

「じゃ、司令官はなにを言ってた?」
アミはややいたずらっぽい視線になって聞いた。

「えーと、いい子でいるようにって・・・天国に行けるように」

アミは笑って僕に聞いた。
「そう言った?ペドゥリート」

「うん、そして世界の終わりがくるけど、いい子でいれば彼がすくってくれるって・・・」
キャプテンは手びき書から目を離して、優しく僕たちの頭をなでた。

アミは続けて、
「いつも、こういうことになるんだ。司令官の言ったことの千分の一もわかっていないよ。だから、とても高いエネルギーの場合にはどうしても”変圧器”が必要になってくるんだよ。

もし、テレビを直接、高圧線に接続したらどうなる?テレビはたちまち破裂しちゃうだろう。そんなに高いエネルギー用にはできていないんだ。だから変圧器を通して電圧を下げ、受信機が耐えられる水準に変えなければならない。

司令官の水準はきみたちにとってあまりにも高すぎて、彼が言ったことはそのままじゃよく理解できない。
でも、僕は同じことをきみたちがよくわかるように話すことができる。

きみたちはここで見たり、体験した全てのことを、また、一冊の本に書かなければならない。なのにきみたちは司令官の言ったことをよくわかっていないし、完全に覚えてもいない。

だから、本を書くときには僕たちがきみたちにテレパシーを送って、記憶力を活発にするようにしてあげるんだよ」

「ここが操縦室です」
エレベーターの扉があくと同時にキャプテンが言った。

スクリーンやさまざまな装置、配電盤などがところせましと並んだ、とても大きな部屋に入った。たぶん、いろいろな惑星からきているのだろう、容姿の異なった人々が沢山働いていた。

ちらりと見ることはあっても誰も、僕たちを少したりとも、気にとめていない様子だった。外部世界からのどんな訪問客も別にめずらしいことではないようだった。

キャプテンの指令で円盤は振動をはじめ、数メートル浮上すると、そのままゆっくりと横のほうへ移動した。それから母艦の床にあいた穴を下って水の中に出た。

母船から数キロメートル離れたところで、びっくりするようなものが目に飛び込んできた。黒い大きな割れ目が海底にぽっかりと口をあけて僕たちを待っていたのだ。間髪を入れずに円盤はそのまっ暗な闇の中に向かって滑り込んでいった!・・・

はしからはしまで、ひとつの山がすっぽり入ってしまいそうな大きさだった。不気味につき出た黒い岩盤。円盤はその中をどんどん進んでいった。

ずっと奥のほうに行くと、その巨大な割れ目はなにかで削り取られたような、ほとんど磨かれたような完全に丸いトンネルに変わっていた。

穴はとても大きくて、巨大な円盤も楽々と入ってしまう。まるで土木技師がつくったようだった。

「そのとおりだよ、ペドゥリート。このトンネルは我々のエンジニアがつくったものだ。大陸プレートのぶつかり合う危険性の高い地点に向かってつくられているんだ」

「えっ?なに?その、たいりく・・・なんとかって」
とビンカが聞いた。

「大陸プレートだよ。大陸っていうのは、ちょうど岩でできた”いかだ”の上にのっかっているようなものなんだ。それを大陸プレートというんだ。

それはゆっくりと、お互いに押し合うんだよ。ちょうど今、ここで起きているように、ときには大陸どうしがぶつかる方向に動いたりしてね。

もう直ぐその蓄積されたエネルギーによってプレートの一部が破壊される。それによってひき起こされる震動が、地球の表面に地震となってあらわれるんだ。彼らは今、ここでその震度を小さくするための作業をしているんだ」

すると今、僕たちは震源地にいるんだ。地球の奥深く、何十キロも続くぶ厚い岩盤に囲まれた中、大地震のどまん中にいるんだ!そう考えたら恐ろしさでいっぱいになった。

恐怖で血の気がひき、うろたえている僕を見て、アミは、思わずほほえんだ。

「ペドゥリート。この円盤がどのくらいの衝撃に耐えられるか全く想像もつかないだろう・・・」

しばらくトンネルを進むと、度肝をぬかれるような光景が眼前にひろがっていた。僕たちは、想像を絶する巨大スケールのドームの中にいた。円盤がおおよそ五十ぐらい、強烈な光を放ちながらその空洞の中に停止していた。おどろきのあまりビンカも僕も口があいたままになっていた。

「プレートの衝突点の岩盤に光線をあてて砕き、粉にすることによって緊張を少しずつ弱めているんです。それでも地上には地震となってあらわれるけど、震度はずっと小さくなるんです」
とキャプテンが説明してくれた。

僕たちの乗った円盤は、途中いくつもの円盤のあいだをぬって、ドームのある特定の地点に停止した。他の円盤はみな、キャプテンの円盤よりはるかに小さかった。

卵のような頭をしたオペレーター(べつにからかっているわけではないけど、その男の人は、とても白いはだをしていて、てっぺんのとがった楕円形の頭には髪の毛が一本もなかった)の合図で、キャプテンは指令と思われるものを出した。

その瞬間、全ての円盤からまぶしい緑色の光線が上のほうへ向かっていっせいに発せられた。同時に激しい震動が床に伝わってきた。

「このスクリーンを見てごらん」
アミは沢山のスクリーンが並んだパネルを指さした。

おおぜいの人たちがそれを見ていた。そこには都市や町や村や人里離れた場所の景色がうつっていた。また、いくつかの家とその内部で眠っている人たちの姿がうつった。

「この人たちはこの計画に選ばれているので保護してあげなければならないんだ」

「でも彼らはそれを知っているの?」

「もし知っていたとしたら、とっくに外にとび出しているよ。我々が危険を知らせてあげているはずだからね。でも、この計画に選ばれていることは、今のところ全く知らないでいる。揺れが近づいてきたよ。怖がらずに見ていてごらん」

緑色の光線が黄色に変わり、やがて目のくらむ白い光に変わった。その瞬間、地下の数百万トンもの岩盤がぶつかったような、それこそ耳の鼓膜が破れそうなほどのすごい音がした。

スクリーンには地震のありさまがうつし出されていた。倒れた電柱、大きく枝をゆすっている木々、家から外へとび出した人々・・・。同時に僕たちの円盤の上に沢山の砕かれた岩やその破片が落ちはじめた。

ビンカは恐怖におののいて、僕に強くしがみついてきた。僕もとてもこわかった。

アミは僕たちを落ちつかせるような声で言った。
「少しも怖がることはないよ。我々には全く危険はない。ほら見てごらん。もう揺れはおさまったよ」

本当にゆれも音もやんでいたが、僕たちの円盤は砕かれた岩の中にすっかりうめつくされていた。窓の外にはなにも見えなくなっていた。

「どうやってここからぬけ出すの?」
と、まだおどろきのおさまらないビンカが聞いた。

キャプテンがビンカに近づき、そのバラ色の髪の毛にそっと自分の手をのせて言った。

「決して怖がる必要はないよ。砕けた岩石の中でもこのまま進めるんだよ。我々は、きみたちのようなよい子をいつも保護するためにいるんだ。

ふたりとも、とてもよく使命を果たしている。今、見ていること全てをこれまでのように、また本に書いて人々に情報をひろめなければならない。もっと先になったら、さらに別の新しい仕事をしてもらうことになる。

きみたちの使命は、宇宙の基本法が”愛”であること、そして我々の存在と我々の支援の目的について、人々に知ってもらうことにある。

信念と確信を強くもちたまえ。きみたちの世界における我々の友の数が日に日に増えてゆく。救済のための知識の扉は今や開かれている。

沢山の人々が苦難のときを乗りきるための情報を受け取れるように、そしてまた永遠の価値をもつ愛の種が芽生えるように手助けもしている。怖がらずに仕事をしたまえ。我々がいつもきみたちを保護し、支持し、支援しているからね」

キャプテンが話し終えたとき、どうやってだかわからないうちに、もうあのドーム、あのトンネルから抜け出ていた。そして巨大な割れ目をさらに進んで海底へと向かった。

僕たちは、海の底よりもずっと下にいたわけだ。

アミが僕たちに話しはじめた。
「表示盤によれば、まだまだ沢山のエネルギーがたまっている。明日、また同じ作業をくりかえさなければならない。

もし、自然のままにいちどに全部のエネルギーが放出されたら、とんでもない大震災になりかねない。小さな地震を何カ月にもわたってくりかえすことで少しずつエネルギーを放出しているんだ。

それでも全ての大地震をさけられるわけではない。大都市のような人口密集地帯では、小さな地震を起こしながら、もっとも人口が少なくなる時間帯に大地震が起きるように調節することで、少しでもその被害を小さくするようにしているんだ」

どこからともなく、大型母船があらわれた。中に入ってキャプテンに別れをつげてから、僕たちは、ふたたびアミの円盤のほうに乗りこみ、母船をあとにした。

「目撃証拠を残す指令が入っている。視覚可能な状態で、あの船の前にとび出そう。あそこの誰かが、我々の円盤を目撃する必要があるんだ」
とアミは僕たちに言った。

>>>「もどってきたアミ」第9章 いよいよキア星へ

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