並木良和

「分離から統合へ 「人類の目覚め」を紐解く二つの異なる切り口」Part4

分離と統合のプロセス

幼少期の意識の発達は「発達心理学」という学問が、大人になった時の意識のレベルは「自我心理学」や「深層心理学」が解き明かしてきた。近年、「トランスパーソナル心理学」や「インテグラル理論」が、自我のレベルを超えて、仏教でいう「悟り」の境地まで視野に入れて発達論を展開している。

意識の成長と発達のサイクルを見ていこう。前半は「分離」することが成長であり、後半になると次々と「統合」していくことになる。

1.宇宙との分離:胎児にとっては母親の胎内が宇宙の全てだ。母子の分離は宇宙との分離であり、それにより「バーストラウマ」が発生する。バーストラウマはあらゆる分離感覚の源であり、人生におけるあらゆる苦しみの要因だと言われている。

2.世界との分離:幼児は見えている範囲が世界だと認識しており、隠れるという概念がない。幼児が「いないいないばあ」で喜ぶのは、相手が世界から消えて、また突然出てくるからだ。やがて幼児は「いないいないばあ」では喜ばなくなるので、幼児は世界と分離したことがわかる。

3.身体との分離:3歳くらいから第一反抗期が始まる。これは自我の芽生えだが、当初の自我は身体と分離していない(身体自我)。身体から分離した自我が発生する以前の領域を「前個」のレベルという。大人と同じように身体から分離した自我を獲得すると、自分の身体を客観的に眺められるようになる。

4.メンバーシップ認識:3~5歳で幼児はその社会が共通して持っている認識様式に参加していく。私たちは、今の日本社会とアフリカのマサイ族とでは人間が世界を認識する様式は変わらないと思っている。ところが研究者たちはそうではなく、それぞれの社会に固有の認識様式があり、幼児は無意識のうちにそれに参加していくのだと説いている。
例えば、今の日本社会では何か物があればその後ろは見えないのが常識だが、LSD(半合成の幻覚剤)セッションをやると、それが見えてしまうことがある。あるいは、ランナーズハイや瞑想の「目撃の体験」では、自分の姿を斜めから後方から見てしまう事がある。人によっては、はるか彼方の様子を手に取るように見ることもある(リモートビューイング)。どうやら人間は眼球と視神経以外のメカニズムでも「見る」ことができるようだ。科学的な説明は出来ないが。そういう能力まで含めると、人間本来の認識様式は、私たちの常識をはるかに超えた可能性がある。

日本社会とアメリカ社会も細かく見ていくと認識様式が違う。例えばピストルで撃たれた時にアメリカでは頭か心臓に当たらない限りまず死なないが、日本では結構死ぬそうだ。このことを「集合的一般常識」という概念で説明できる。ピストルで撃たれると死ぬという常識が現実化してしまうのだ。真実に基づいて常識が生まれるのではなく、常識があるから、その通りの現実が起きてしまう。常識が先で現実が後なのだ。

その社会共通の認識様式に参加するということは、認識に大きな制約をもたらすが、それはその社会に参加するためのパスポートと同じだ。そのパスポートによって人は楽に社会生活を営める。また、殆どの文明社会の認識様式は仏教でいう「分別知」(これまでの物事を分離して認識する普通の平凡な認識様式)だ。

5.初期自我:身体から分離した最初の自我が「初期自我」。原初的、本能的な欲求がそのまま行動に出るのが特徴。このレベルから自我の発生と確立である「個」のレベルに突入する。

6.中期自我:7歳くらいになると、親からの躾などにより道徳観、倫理観を身に付け、行動を自らコントロールできるようになる。親が望む行動がとれるようになり、社会の一員に参加していく。こみ上げてくる原初的は欲求とそれをコントロールする道徳観の間で葛藤が始まる。大人の世界に対しては、被保護-服従ー依存という関係を保っている。

7.シャドーの分離:道徳観・倫理観が確立して自らをコントロールするようになると「こうあってはいけない」という衝動や部分人格を、自動的に無意識レベルに抑圧する。それは、強力なモンスターに育っており、「シャドー」と呼ばれている。「シャドー」が協力に育ってくると、人はそれを投影して戦ったり、すべてを「正義vs悪」というパターンで読み解こうとする。

8.後期自我:12歳くらいから、反抗期などを経て、親への依存を断ち切って独立した自我を獲得していきます。理性でコントロールして「立派な社会人」を演じることが出来るようになる。ただし、立派な社会人を装えば装うほど、シャドーのモンスターも強力になり、「シャドーの投影」に起因する「戦いの人生」を歩むことになる。

9.実質的変容=シャドーの統合:いままで次々に「分離」することによって成長してきた意識が、初めて「統合」に変わるのが「実質的変容」であり、「シャドーの統合」だ。統合した結果が「成熟した自我」だ。このレベルに達すると「恐れと不安」がなくなるので、心にとらわれがなくなり、そのために恐怖もなくなるという心境になる。「初期自我」「中期自我」「後期自我」「成熟した自我」の4レベルが「個」のレベル(自我の発生と確立)だ。

10.生物社会的帯域:「4.メンバーシップ認識」で獲得した社会共通の認識様式を手放す。分離の激しい社会の認識様式を離れて、いよいよ「無分別智」に向かって一歩踏み出すことになる。皆が見えないものが見えたり、チャネリング能力が出てくると、生き辛さを感じるかもしれない。究極は肉体という革袋の中が自分なのではなく、宇宙全体が自分だという「無分別智」。

11.身体との統合:私たちの身体は、意識レベルでは検知できていない様々な情報をキャッチしている。手に持った物体が毒なのか、あるいは薬が効くかどうか全てわかっている。これを「身体智」と呼ぶ。

12.世界との統合:「2.世界との分離」で、一旦分離した世界と再び統合するとういことは、目の前のものと一体を感じられることの境地に達するということ。

13.宇宙との統合:最終的には自分が宇宙そのものだということを実感する。この段階に達した人が「無分別智」を体現する。

14.実在的危機:地位も名誉も収入もある成功者が、「自分は何者で、人生の目的は何か」という根源的な問題に真剣に悩み始めることを発見し、「実質的危機」と名付けた。のちにこれは「実質的変容」のための大切な前奏曲であることがわかった。自分軸を見失って、親の期待や世間の要望に必死に適合して生きてきたのが限界に達して、様々なトラブルとして降りかかってくる、と解釈している。この危機をしっかり意識できれば、スムーズに乗り切ることが出来る。

15.シャーマンの危機:沖縄のユタは「カミダーリ」と呼ばれる霊的な危機を経て成長することが知られている。このような現象を「魂の危機」と呼んでいる。一般に「主軸的発達段階」が未成熟なまま「超個」のレベルの能力が身についてしまうと魂の危機に陥る。多くの場合、霊視やテレパシーなどの超能力に類する力が身に付き、動物が寄ってきたりするが、「主軸的発達段階」が未成熟なので、単に精神のバランスが崩れているだけだ。

Part5に続く

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