宇宙人アミ

「アミ小さな宇宙人」第4章 人を幸福にしないシステム

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第4章 人を幸福にしないシステム

村の街灯に照らされている最初の通りに出た。十一時ごろだった。

こんなに遅く外を焼くのは僕にとってひとつの冒険だったが、アミと一緒だったので少しも不安ではなかった。

通りを歩きながらアミはユーカリの葉の間から見える月に目を奪われていた。

そして、ときどきカエルやコオロギの鳴き声や、遠くの波の音に耳をかた向けるように僕に言った。

立ちどまって松の木の樹皮や土の香りなどを深く吸いこんでうっとりしていた。また、美しい家並みや通りや町角に目を奪われていた。

「なんて綺麗な街灯なんだろう。絵に描いてみたくなるほどだ・・・。見てごらん。月の光に照らされ、星いっぱいの夜空にシルエットのように、くっきりと浮かびあがったアンテナを・・・。

ペドゥリート、人生はこれらを健全に満喫する以外に目的はない。人生が提供してくれた全てのものに注意の目を向けるように努めてごらん。

絶えずいろんな素晴らしさを発見することだろう。頭ばかりで考えるかわりに、感じるように知覚するように努めてみてごらん。

人生の深い意味は思考のもっと向こう側にあるんだ・・・人生は現実のおとぎ話のようなものなんだ・・・神がきみにささげた美しい贈りものなんだよ・・・なぜなら神はきみを愛しているからね・・・」

彼は僕に、ものごとをもう一度、別の新しい視点から見ることを教えてくれた。

ごく普通に見なれてきた、そして、あらためて注意をはらうことのなかったこの日常の世界(以前には一度たりとも感じたこともなかった)のことを。

本当に自分は天国にいるんだということに、今はじめてはっきり気がついた・・・。

温泉場の広場に着いた。何人かの若者がディスコの入口で、別の何人かは広場のまん中で、立ち話をしていた。

夏のシーズンが終わりかけていたせいもあり、とても静かだった。

僕たちに注意を向けるものは誰もいなかった。アミの服装にしても、子どもの仮装ぐらいにしか思わなかっただろう・・・。

もし、今この広場を歩いている子どもの正体が、みんなにわかったらどうなるだろうと想像してみた。新聞記者やテレビの取材陣が大勢押し寄せて・・・。

「それは遠慮しておくよ」

アミは僕の考えていたことを読んで言った。

「だって十字架にはりつけにされたくないからね・・・」

何を言おうとしているのかわからなかった。

「第一に僕の言うことなんか全く信じないよ。もし最終的にわかったとしても不法入国、ということでまず逮捕され、そのあとスパイの容疑者として扱われ、何かの情報を聞き出すために拷問にかけられるだろう。そのあとで医者が僕の小っちゃな身体をあれこれと診察するだろう・・・」

アミは笑いながら言ったけれど、それはとても悲観的で、暗い、しかもかなり正しい推測だと思った。

あまり人のいないところまでやってきてベンチに座った。

僕は宇宙人が違和感なく人々の前に姿をあらわすには、少しずつ姿をあらわしていって、人々がだんだん慣れていくようにすればいいと思った。

「我々もそれに似たことはやっている。しかしはっきりと姿をあらわすのは無理だという三つの理由をさっきあげたけど、基本的な理由がもうひとつある。それは法によって禁じられているんだ」

「法って、どんな法?」

「宇宙の法さ。きみの世界にも法はあるだろう。文明世界にも全ての人が守らなければならない規定があるんだ。そのひとつは未開世界の発達進歩に干渉しないということなんだ」

「未開世界だって?」

「三つの基本的な必要条件を満たしていない世界のことを、我々は未開世界と呼んでいる・・・」

「その三つって、いったい何?」

「文明世界と呼ばれるための三つの守らなければならない必要条件は、第一に宇宙の基本法を知ることだ。この法を知って実行するように心がければ、あとの二つを実行するのは簡単なことだ。第二は世界の統一をはかること、たったひとつの政府をつくるべきなんだ。第三は、宇宙の基本法に基づいた組織づくりをすること」

「よくわからないな。その基本法って、なんのことなの?なんのための?」

「どう?やっぱり知らないだろう。きみは文明人じゃないよ」

とアミは僕をからかいながらそう言った。

「僕はまだ子どもだよ・・・でも大人はたぶん知っていると思うよ。科学者とか大統領とか、もっと偉い人はね」

アミは大笑いをして、
「大人!?科学者!?大統領!?ごくわずかの例外を除いて彼らほどそのことを知らない人たちはいないよ」

「いったい、どんな法なの?」

「もっとあとになったら、教えてあげるよ」

「本当に?」

大統領でも知らないことを、そのうち教えてもらえるかと思うと、なんだかとても興奮してきた。

「ただし、いい子にしていたらだよ」
とアミは冗談ぽくつけくわえた。

そして、未開文明の惑星に干渉することは、宇宙の法で禁止されているということについて、少し考えた。

「だったらきみは、その法を破っている!」
僕はハッと気がついて言った。

「えらい!それに気がついたのかい」

「そうさ、最初に干渉することは禁止されていると言ったにもかかわらず、きみは僕と話をしている・・・」

「でも、これは地球の発展進歩への干渉とは違うんだよ。もし公の場にはっきりと姿をあらわしたり大勢の人々とコンタクトをとったりしたならば、それは干渉だよ。でもこれは”救済計画”の一部なんだ」

「もっとわかりやすく説明してくれないと、なんだかぜんぜんピンとこないよ」

「少し複雑なテーマだから、全てを今説明するわけにはいかないけどね。なぜって、まだよくは理解できないだろうし、たぶんもっと先になったら説明してあげることになるだろう。ただ”救済計画”はとてもとても微妙で、デリケートに服用しなければならない一種の薬のようなものなんだよ・・・」

「薬?その薬ってなんのこと?」

「情報だよ」

「情報?なんの情報?」

「地球に原爆が落とされた後、我々の円盤が頻繁に目撃されはじめた。それは地球人が宇宙で唯一の知的生物でないという証拠を、残すために意識的にしたものなんだよ。

それがひとつの情報だよ。その後、円盤の目撃回数を増加させた。これがまた別の情報だ。

次に我々を撮影するようにさせた。同時に幾人かの人、例えばきみのような人との小さな接触の機会をつくった。またメッセージを、人々の脳波に送った。

これらのメッセージはラジオの音波のように空気中にあり、全ての人に届くけど、ある人はそれを受信するのにふさわしい受信器をそなえていて、別の人はそなえていない。

メッセージを受け取った人の中には、それを自分自身の考えとして受け取ったり、また他の人は神からの霊的なインスピレーションとしてとらえ、また別の人は我々宇宙人のメッセージと考える。

ある人はこれらのメッセージを、かなり自分の考えやその信仰によって歪曲して表現したり、また別の人はかなり純粋に表現する」

「そのあと、みんなの前に姿をあらわすわけ?」

「もし自滅しないで、三つの必要条件を満たしていたらね。それまではムリなんだよ」

「自滅を防ぐために干渉しないなんて、ちょっと自分勝手なエゴイズムだな」

と少し不満に思って言った。

アミは笑って星のほうを見つめた。

「他の文明の自由に対する我々のかかわり方は、彼ら自身の決めた運命にまかせておくしかないということなんだ。

進歩という問題はとてもデリケートな事柄でやたらに干渉することはできない。ただきみのようなある特別な人を通して、わずかにほのめかすことしかできないんだ・・・」

「僕のような?でも僕の何が特別なの?」

「たぶんもっと先になったら話してあげられるかもしれない。でも今言えることは、ある”条件”をそなえているということで、かならずしも何か”特性”をそなえているということではない。

ペドゥリート、僕はすぐ行かなくちゃならない。また僕に会いたいかい?」

「もちろんだよ。短い時間にきみをとても尊敬するようになった」

「僕もだ。でも、また戻ってきてほしいなら、僕と一緒にいたことを一冊の本にしなくてはいけない。僕はそのために来たのだし、これも”救済計画”の一環なんだ・・・」

「僕が本を書くだって?だって、僕そんなのできっこないよ!」

「子どもの童話のように、おとぎ話のように書くんだ・・・そうでないと人はみな、きみを嘘つきか頭がおかしいんだと思うよ。それに子どもに向けて書くべきだ。小説を書くのが趣味のきみのいとこに手伝ってもらうといい。きみが話して彼が筆記する」

アミは僕のことを僕以上に知っているようだった・・・。

「その本は情報のひとつになる。でもこれ以上のことは、我々には禁止されているんだ。でも、もう、進んだ文明を持った悪い宇宙人が、地球を侵略する可能性が全然無いってこと聞いて、安心した?」

「うん」

「そうだろう。でも、地球人が悪を克服しないうちに、我々が生きのびることを手助けしたとしたら、地球人は直ぐに他の星を支配したり搾取したり征服したりするだろう・・・

でも進歩した宇宙というのは、平和で、愛と親交に満ちたところなんだ。そのうえ、他の種類の強大なエネルギーがあるんだ。その前では、原子力エネルギーは太陽の前のマッチの火のようなもんだよ。

ある乱暴な人たちがこのエネルギーを所有し、文明社会の平和をおびやかすような、さらには宇宙の大災難まで招くような、危険を犯すことはできないんだ・・・」

「アミ、僕とても心配になってきた」

「宇宙の大災難がかい?」

「ううん、もう、とても遅すぎると思うんだ・・・」

「ペドゥリート。遅すぎるって人類を救うことがかい?」

「ううん、寝るのがだよ」

アミは大声をあげて笑い出した。

「大丈夫だよ。ペドゥリート。じゃ心配しないよう、きみのおばあちゃんの様子をちょっと見てみよう」

と言ってベルトにつけた小さなテレビを取り出した。僕のおばあちゃんが口を半分あけてねている姿がうつった。

「じゅうぶん睡眠を満喫している最中だ」

冗談半分にアミが言った。

「あーつかれた。僕も、もうねむたい」

「わかった。じゃ行こう」

家のほうに向かって歩いていくと、ちょうどパトカーと出くわした。こんな夜遅く歩いている二人の子どもを見かけ、警官は車を止めて僕たちのほうへ向かって歩いてくる。心臓がドキドキした。

「きみたちはこんな遅くまで、ここで何をしているんだ?」
警官が言った。

「散歩しているんです。人生を謳歌しているところです。あなたがたは仕事ですか。悪党狩りでもしているんですか?」

とアミはあいかわらず笑って言った。

アミが警官に対しても少しも怖がっていない態度を見て、いっそう僕は驚いた。

でも警官はアミの態度がおかしいらしく、アミと一緒になって笑っていた。

僕も笑おうとしたけれど、緊張していてとても笑えなかった。

「その服は、どこから持ってきたんだ?」
とアミの風変わりな服装をさして言った。

「僕の星からさ」
アミはぶっきらぼうに答えた。

「ああ、じゃ、おまえは火星人だな」

「火星人?火星人じゃないけど、宇宙人には違いない」

アミはゆかいそうにむじゃきに答えたが、僕のほうといったら、アミとは反対にますます不安が増していった。

「じゃ、おまえのUFOはどこにあるんだ」

と別の警官が、父親が自分の子どもに接するような感じでアミに聞いた。

子どものふざけっこのようではあったけど、アミは全て真実を言っていた。

「海岸のところに置いてある。海の中にね。ペドゥリート、そうだよね」

僕はどうしていいかわからなかった。笑おうとしたけど、顔がひきつってとてもうまく笑えなかったし、本当のことを言ってしまうなんてとても考えられなかった。

「光線銃は持ってないのか?」

警官は問答のやりとりを楽しんで言った。

アミもそうだった。ただ僕だけは戸惑いと心配がつのっていった。

「銃は持つ必要はない。我々は善良なので誰も攻撃しないから」

「じゃ、もし悪漢がこういうリボルバーをもって現れたらどうする?」

と言って、銃を脅迫者のように見せつけた。

「もし僕を攻撃してくるなら、僕の念力で相手を動けないようにさせるね」

「ほお、おもしろい。じゃ、やってもらおうじゃないか」

「それは、こちらも願ってもないことです。効果は10分間続きます」

三人ともとてもゆかいに笑った。突然アミは身動きをやめ静止して、とてもまじめな顔になりふたりをじっと見つめた。そして、とてもきみょうな命令調の声で彼らに言った。

「10分間、身動きしないでそのまま止まれ!動けないぞ、動けない・・・ヤーッ!」

警官の動きがピタリととまった。警官はさっきの笑ったままの顔で、ぴくりとも動かなくなっている。

「わかったかい?ペドゥリート。遊びか、おとぎ話のようにして本当のことを言うんだ」

笑ったまま石のようになった警官の、鼻やひげをなでながら言った。

僕はますます怖くなってきた。

「逃げよう。早くここから遠ざかろう。目をさましたら、大変だよ」

と声を殺しながら言った。

「まだ10分経つまでには、ずいぶん時間があるから心配しなくても大丈夫だよ」

と言って、アミは警官の帽子を動かしはじめた。僕はただ一刻もはやく、そこから遠のくことばかり願った。

「はやく!はやく!」

「今を楽しむかわりに、また先のことを心配しはじめたね。わかった、行こう」

アミは笑ったままの状態でいる警官に近づいて前と同じ声で命令した。

「目ざめた時には、二人の子どものことは永遠に忘れているように!」

最初の四つ角に出てから海のほうへ曲がった。

現場から遠ざかるにつれて、やっと気持ちが落ちついてきた。

「どうやってやったの?」

「催眠術さ、誰にでもできるよ」

「全ての人が催眠術に簡単にかかるとは思わないよ。うまい具合にかかりやすい相手にぶつかったんだね」

「全ての人が催眠術にかかるよ。そのうえ皆、たいてい催眠状態でいる・・・」
とアミが言った。

「何が言いたいの?・・・僕は催眠状態なんかじゃないよ。ちゃんと目ざめている」

アミは、僕がはっきり断言したのを聞いて、しばらく笑ってから言った。

「小道を歩いてきたときのことを思い出してごらん?」

「うん、思い出しているよ」

「あの時は全てがいつもと違っているように感じたね。全てが美しく見えたろう?」

「うん、あのときは催眠状態だったんだね・・・たぶんきみがかけたんだろう!」

「あのときは目ざめていたんだよ!今は催眠状態で眠っている。人生には少しも素晴らしいことがなく、危険なことばかりで一杯だと思いこんでいる。

潮騒も耳に入らなければ夜の香りも感じない。歩いていることも、本当に見るとはどういうことなのかの認識もない。呼吸することも楽しまない。

きみは、今は催眠状態にいるんだよ。否定的な催眠状態だ。ちょうど戦争を何か栄光のように感じている人とか、自分の考えに同意しない人をみな敵だとみなしている人とか、制服を着ているだけでなんだかえらくなったように感じている人と同じようにね。これらの人たちはみな、催眠状態だ。催眠術にかかっていて、深く眠っているんだ。

もし、人生やその瞬間が美しいと感じはじめたとしたら、その人は目ざめはじめているんだ。目ざめている人は、人生は、素晴らしい天国であることを知っていて、瞬間、瞬間を満喫することができる・・・でもあまり多くのことを未開文明に要求するのはよそう・・・自殺する人もいる。なんてバカなことか気がついたかい。自殺するなんて!」

「そういうふうに言われれば、たしかに、きみの言うとおりだね・・・。でもどうしてあの警官はきみの冗談に腹を立てなかったの?」

「それは彼らの良い部分、子どもの部分をついたんだよ」

「でも、彼らは警官だよ!」

アミは、なんてバカなことを言うんだと言わんばかりの顔で僕を見た。

「どんな人でも良い側面を持っているんだ。むじゃきな子どもの側面をね。百パーセント悪い人というのはいない。もしよかったら刑務所に最悪の囚人を見に行こうか・・・」

「いやいや、それは遠慮しておくよ・・・」

「一般的に言って、この地球の人でさえ、悪よりも、善の部分を多くもっている。みな自分のしていることは正しいと思ってやっている。ある人は間違いをおかす。でもたいていは過失から出たことで、悪意があってやったんじゃない。

たしかに人は否定的な催眠状態になると笑顔も消え、しまいには危険な状態におちいりかねないというのは本当だ。でも、彼らの良い側面をひき出すようにしてあげれば、彼らもきみに良い返答をしてくるし、彼らの悪い側面ばかりに目がいくと、今度はきみに敵意をむき出しにしてくるんだ。でも全ての人は、ある時には遊び好きなんだよ」

「じゃ、どうしてこの世には幸福より不幸のほうが多いの?」

「それは人が悪いのじゃなくて、古いシステムを使っている組織がいけないんだ。人間は進歩してきたが、システムがそのまま変わらずにいる。悪いシステムが人を傷つけ、不幸へと追いやって、しまいに間違いをおかすようにさせる。でも良いシステムの世界的組織は悪人を善人に変える力があるんだよ」

僕には彼の説明がよくわからなかった。

>> 「アミ小さな宇宙人」第5章 誘拐!

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